海上自衛隊の最新鋭もがみ型護衛艦6番艦「あがの」進水 艦名は阿賀野川に由来

By Kosuke Takahashi

海上自衛隊の最新鋭もがみ型護衛艦6番艦「あがの」が進水(海自佐世保地方総監部公式ツイッターより)

海上自衛隊の新型3900トン型護衛艦である「もがみ型」6番艦の命名・進水式が12月21日、三菱重工業長崎造船所(長崎市)で行われた。「あがの」と名付けられた。同造船所での海上自衛隊艦艇の進水式は6月の「やはぎ」以来。2024年3月に就役する予定。

海上幕僚監部広報室によると、艦名は福島県に源流を持ち、新潟県を流れて日本海に注ぐ「阿賀野川」に由来する。艦名は海上自衛隊内での募集検討を経て、浜田靖一防衛相が決定した。

この名を受け継いだ日本の艦艇としては、旧海軍の阿賀野型軽巡洋艦1番艦(ネームシップ)の「阿賀野」に続き、2代目。

「もがみ型」は年2隻というかなりのハイペースで建造が進められている。1番艦「もがみ」と2番艦「くまの」は順番を逆にして、それぞれ4月、3月に就役した。両艦は機雷戦と水陸両用戦を担当する横須賀基地の掃海隊群に配備された。3番艦「のしろ」は今月15日に就役し、佐世保基地の第13護衛隊に配備された。4番艦「みくま」は来年3月、5番艦「やはぎ」は来年12月の就役をそれぞれ予定している。三菱重工業広報部によると、8番艦までが既に建造中だ。

●海自護衛艦として初の対機雷戦能力

「もがみ型」は、従来の護衛艦の装備に加え、掃海艦艇の装備を併せ持つ新型の多機能護衛艦(FFM)だ。海自護衛艦としては初めて機雷戦能力を有する多目的艦だ。FFはフリゲートの艦種記号で、これに多目的任務対応(multi-purpose)と機雷戦(mine warfare)を意味するMが加えられた。新たに水中・水上無人機、簡易型機雷敷設装置が搭載され、対潜戦、対空戦、対水上戦、対機雷戦に投入できる。

「もがみ型」は軍事力増強を続ける中国の海洋進出をにらみ、全長1200キロに及ぶ南西諸島を中心に日本の海上防衛の一翼を担う次世代の主力艦となる。護衛艦54隻体制のうち、22隻を占めることになる。

海上幕僚監部は「FFMは従来は掃海艦艇が担っていた対機雷戦機能も備える」と強調する。機雷掃海能力や対潜能力は、アメリカ海軍が海自にとりわけ期待する分野でもある。

アメリカ軍の準機関紙、星条旗新聞の6月20日付の記事によると、アメリカ海軍はウクライナ戦争を踏まえ、中露艦隊に対抗するため、コンパクトで小回りの利く、コルベット艦やフリゲート艦の増勢が必要になっている。アメリカ軍は今後、日本をはじめとする同盟国や友好国にも周辺海域での警戒監視活動の貢献をより一層求めてくるとみられる。

11月6日に相模湾で実施された「国際観艦式2022」では、受閲艦艇部隊として「もがみ」と「くまの」が航行するシーンも観られた。

●ステルス護衛艦

「もがみ型」は基準排水量が3900トン、満載排水量が約5500トン。全長133メートル、全幅16.3メートルと、従来の護衛艦と比べて船体をコンパクトにし、乗員数も通常型の汎用護衛艦の半分程度の約90人に抑えた。このうち、女性自衛官は約10人となり、女性自衛官の居住区画も整備された。また、護衛艦としては初めて「クルー制」を導入する。複数クルーでの交代勤務の導入などによって稼働日数を増やすことを目指している。艦内の火災や浸水に対するダメージコントロールも大幅に自動化された。建造費は5番艦「やはぎ」と6番艦艇「あがの」の2隻で計約943億円。

「もがみ型」は船体表面の凹凸を減らし、対艦ミサイルなどに探知されにくいステルス性の形状を備える。魚雷発射管やミサイルなどの電波を受けやすい機器も艦内に格納する。船体もロービジビリティ(低視認性)を重視した灰色と化しており、レーダーに映りにくい「ステルス護衛艦」とも称されている。

●海自護衛艦として初の複合機関CODAGを採用

もがみ型の速力は30ノット(時速約56キロ)以上。主機関としては、海自護衛艦として初めてガスタービンとディーゼルを併用する複合機関のCODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)を採用した。巡航時など通常はディーゼルを使用し、急加速時や高速時はガスタービンを併用する。ガスタービンエンジンはイギリスのロールス・ロイス社から川崎重工業がライセンスを得て製造したMT30を1基搭載。MT30は海自護衛艦では初採用となった。ディーゼルエンジンはドイツのMAN社製の12V28/33D STCを2基搭載している。軸出力は7万馬力。

三菱重工業が提案していた「3000トン型護衛艦FFM」の概要イラスト。盛り込まれる主要性能や搭載予定の装備などがわかる(防衛装備庁ホームページより)

主要兵装としては、三菱重工業製の新型の17式艦対艦誘導弾(SSMS-3)の4連装発射筒を2基、近接防御火器システム(CIWS)として後部にある格納庫上部に対艦ミサイル防御装置(SeaRAM)11連装発射機を1基それぞれ装備する。また、12.7ミリ重機関銃M2を射撃できる日本製鋼所製のRWS(リモートウェポンステーション)である遠隔操作式無人銃架を2基、BAEシステムズ製のMk.45 Mod.4 62口径5インチ(127ミリ)単装砲を1基、ロッキード・マーティン製のMk.41垂直発射装置(VLS)を1基(16セル、07式アスロックSUM〈水上艦発射対潜水艦ミサイル〉)それぞれ搭載する。VLSは後日装備となる。

16日に閣議決定された防衛力整備計画では、「護衛艦(DDG・DD・FFM)等に12式地対艦誘導弾能力向上型等のスタンド・オフ・ミサイルを搭載する」と記された。DDGとはミサイル搭載護衛艦で、こんごう型4隻、あたご型2隻、まや型2隻の計8隻のイージス艦となっている。一方、DDとは汎用護衛艦で、あさぎり型8隻、むらさめ型9隻、たかなみ型5隻、あきづき型4隻、あさひ型2隻の計28隻が該当する。もがみ型(FFM)とともに、これらの艦艇に長射程化された12式地対艦誘導弾能力向上型の艦発型などが装備される。

また、もがみ型には対潜水艦戦用としては、NEC製ソナーシステム「OQQ-25」や定番の324mm3連装短魚雷発射管2基を装備し、SH-60K哨戒ヘリコプター1機を搭載する。

●従来の護衛艦にない新装備のUSVとUUV

さらに、対機雷戦用として、日立製のソナーシステム「OQQ-11」を搭載。機雷の敷設された危険な海域に進入することなく、機雷を処理することを可能とする無人機雷排除システム用の無人水上航走体(USV)1艇と無人水中航走体(UUV)を1機装備する。USVとUUVは従来の護衛艦にない新装備となる。USVは後日装備となる。

16日に閣議決定された防衛力整備計画では「就役から相当年数が経過し、拡張性等に限界がある艦艇等の早期除籍等を図り、省人化した護衛艦(FFM)等を早期に増勢する」と記された。防衛力整備計画では向こう5年間で約8000億円を投じる。将来的には計22隻の配備が予定されている。

16日に閣議決定された「防衛力整備計画」についての防衛省資料の一部から

2021年度補正予算と2022年度当初予算を一体化した「防衛力強化加速パッケージ」では、9番艦と10番艦の建造費用として1103億円が確保された。

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