聖路加国際病院の元牧師に賠償命令 患者への性暴力認定

 聖路加国際病院(東京都)で治療を受けていた女性患者が、当時病院に勤務していた心のケアを担う牧師から性暴力を受けたと損害賠償を求めていた民事訴訟で、23日、東京地裁が性暴力を認め、女性に110万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

「当たり前に医療を受けたかっただけなのに」

 訴えによると、2017年5月に同病院で難病の治療を受けていた女性患者が、患者の心のケアを担当する牧師(チャプレン)から、病室で胸を触られたり下半身を触られるなどの性暴力を受けたとしていた。牧師は2018年9月に強制わいせつ容疑で書類送検されたが不起訴となっており、今回の民事訴訟では事実上、性暴力の事実認定が争われていた。

 牧師は裁判では行為の事実を認め「同意があった」と主張したが、判決では、女性が被害を受けた当日に知人の弁護士に相談し、また次回のケアの際に録音機を持参していたなど周辺の事実から鑑みてこれを否定した。また牧師が裁判過程で証言が変遷しており信用性が乏しいことも指摘した。さらに、女性は患者という立場であり拒絶しにくい立場にあったとして、当時雇用していた病院の使用者責任も認めた。

 判決後に会見した女性によると、被害を受けたことを病院側に訴えたがまともに相手にしてもらえず、逆に様々なことを言われ「被害者と加害者が逆転しているような状況もあった」とこれまでの経緯を振り返り「当たり前に医療を受けたかっただけなのに、どうしてこうなったのか信じられない。被害が認められて感無量。ようやくスタートラインに立てた」と語った。

 判決で使用者責任を問われた経営母体の聖路加国際大学は、「判決文が届いていないので判決内容を精査して対応したい」とコメントしている。

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