障害者に自分らしい生活を 長崎に「1人暮らし」シェアハウス 看護師など有資格者が常駐

 「障がいのある方が『安心感ある普通の1人暮らし』ができるシェアハウスを作りました」。本紙情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)にこんな投稿が届いた。長崎市香焼町に昨年12月オープンした市内初の車いす対応型「シェアハウス空屋(そら)」。記者が訪れると、バリアフリーの自由な空間で穏やかに過ごす入居者と職員の姿があった。

 ■平屋を改築

 海が見える高台にハウスは立っていた。保護犬が走り回り、小鳥のさえずりが聞こえるのどかな雰囲気。「こちらへどうぞ」。運営するフラワーカンパニーズの池嵜由美代表(53)が施設を案内してくれた。
 「空屋」は元々グループホームだった平屋をリノベーション。木のぬくもりが感じられるバリアフリーでフラットな室内に共用のトイレや浴室があり、リビングからは保護犬のドッグランを見ることができる。居室は9部屋。現在30~50代の男女4人が入居し、それぞれの「自宅」で生活を送っている。施設のテーマは「わがままに生きる」。エアコンは備え付けで希望者には食事もあるが、生活も時間の使い方も入居者に任せているという。

自立した生活を送る入居者=長崎市、シェアハウス空屋

 ■医療と連携

 池嵜代表によると、入居は▽18~64歳▽重度の障がいがある支援区分5、6-などが対象。施設には看護師や介護福祉士など有資格者の職員11人が交代で常駐し、日常生活の介助などを行うほか、医療機関とも連携している。
 池嵜代表は32歳で介護福祉士の資格を取得。介護老人保健施設などで働き、やりがいを感じる一方、忙殺され「流れ作業」になる日々にもどかしさが募った。3年前、障害者施設でアルバイトをした時、「これが福祉だ」と感じるとともに、障害者が生活していく上で選択肢が少ない現状を知る。

 ■状態改善も

 「障害があっても、家族も本人も自分らしく過ごし、精神的、経済的に自立できる住まいをつくる」。そう決意し、昨年4月に会社を設立。「空屋」を作るに当たっては、大村市にある車いす対応のマンション型施設を参考にした。
 オープンから間もなく1年。池嵜代表は手応えを感じている。入居者の中には職員との会話やリハビリを通じて身体、精神ともに状態が良くなった人も。見学の際に切羽詰まった表情を見せていた家族も「24時間スタッフがいてくれるのは安心感がある」と雰囲気が和らいでいった。

入居者と職員共用のリビング

 入居者の一人、吉村秀樹さん(54)は昨年1月に「化膿(かのう)性脊椎炎」などを発症し車いす生活になった。今年2月、入院していた病院の紹介で「空屋」に入居。ネット環境を使ってテレワークもできたといい、「『普通』に、快適に過ごせています」と話す。
 障害者への理解や制度は少しずつ整ってきてはいるが、いまだ本人や家族の生活には制限が生じ、「我慢」を強いられているのが現状。「障害者が自分のペースで生活できる場所がもっと広がってほしい」。池嵜代表はそう願う。
 「空屋」の入居費用は家賃3万円に管理共益費、火災保険、食費(希望者のみ)など。問い合わせはフラワーカンパニーズ(電095.893.5787)。

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