出雲大社相模分祠 干支「卯」にちなんだ石像お披露目 闘病の彫刻家、伝説をモチーフに制作

石像を制作した西巻一彦さん(左)と妻・千佳さん(出雲大社相模分祠提供)

 神奈川県秦野市平沢の出雲大社相模分祠(ぶんし)の鳥居前に19日、来年の干支(えと)「卯(う)」にちなんだウサギの石像がお披露目された。石像は病と闘う伊勢原市在住の彫刻家西巻一彦さん(63)が掘ったもので、石像制作は今年で10体となった。

 今回制作された卯の石像は出雲大社と関わりの深い大黒様が白兎を助けたとされる伝説がモチーフで、昨年と同様に真鶴町産の本小松石が使われた。社会情勢が不安定な中でも、優しさや慈悲の心を感じてもらおうと、ウサギを包み込むようにほほ笑みながら抱きかかえる姿を掘り、今月10日に完成した。

 西巻さんは2011年に悪性リンパ腫と診断されたが、治療の末に寛解。病気のことを知った出雲大社の草山清和分祠長が長命の願いを込め、「毎年一体ずつ干支の石像を作って生きがいにしてほしい」と依頼。13年から制作が始まった。

 「10年目を迎えるまで体が持つか不安で一種の人生の賭けだった」と話す西巻さん。中でも昨年は再発し、苦しい中での制作だった。「今まで造った石像は生きた証し。石像を見ると、その年の思いや体調が思い浮かぶ」と振り返る。今も再発を繰り返す恐れはあるが、完成まで残り2体と迫り、「あまり気負うことなく、目の前にある壁を一つ一つ乗り越えながら頑張りたい」と意気込む。

 卯以外の9体は境内に干支時計として置かれ、公開されている。

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