横浜・寿地区の歴史を次世代に 支援者や行政職員らが変遷まとめた本

左から加藤さん、ことぶき協働スペースの徳永緑さん、大友さん=横浜市中区

 簡易宿泊所(簡宿)が立ち並ぶ横浜市中区・寿地区の歴史をまとめた書籍「横浜寿町─地域活動の社会史」(社会評論社)が出版された。筆を執ったのは、住民や支援者、行政職員といったさまざまな立場でこの街に関わってきた当事者ら。戦後、社会のひずみを映し続けてきた街の変遷と、そこで生まれた地域活動の記録を次世代に残し、未来を考える一助となることを願っている。

 「不思議なことに、今もみんな資料を持っている」。筆者の一人、寿歴史研究会代表で沖縄大名誉教授の加藤彰彦さん(81)が、ガリ版の冊子を取り出した。1970年代に街で誕生した俳句会や文学研究会の活動を伝える貴重な資料だ。

 加藤さんは市職員として72年から10年間、街の拠点「寿生活館」の生活相談員を務め、夜間学校の設立などにも尽力した。本書は加藤さんをはじめ、さまざまな立場で街を見つめてきた18人が執筆。米軍の接収解除後に簡宿が次々と建ち、高度経済成長を支えてきた日雇い労働者の街が、石油危機やバブル崩壊を経て高齢化が進む現在の姿に変貌するまでを上下巻につづった。

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