顔写真は自分、名義は兄 不正な原付免許、どうやって取得 パスポートまでも

男は県警の運転免許センターで、不正な原付免許を取得した

 顔写真は自分のものでありながら、名義は兄という不正な原付免許を取得した男(33)について横浜地裁は今月、有印私文書偽造・同行使などの罪で、懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)の判決を言い渡した。男は免許取得を申請する際に、自分の顔写真を使用し名義は兄のパスポートを使ったため、運転免許センターの担当者は疑いようがなかったのだという。なぜ、こんなことが可能だったのか─。

 発覚のきっかけは、交通違反の取り締まりだった。昨年10月20日、男は磯子署前の道路で軽乗用車を運転していた。運転席と助手席のカーテンを閉めていたため、道交法違反に当たるとして、その場にいた第1交通機動隊の隊員に停止を求められた。

 男はミニバイクの運転免許「原付免許」しか持っていなかったため、道交法違反(無免許運転)の疑いで現行犯逮捕された。

 そして、調べが進むと不審な事実が明らかになっていった。

 男は免許証とは異なる別の名義の身分証明書を提示したのだ。実はこの別名義こそが男自身で、免許証の生年月日などの情報は全て兄のもので、正しいのは顔写真だけだった。

 男は2020年9月4日、県警の運転免許センター(横浜市旭区)で、運転免許申請書に自分の顔写真を貼り付け、一方で兄の名前を書いて原付免許の交付を受けていたのだ。男はかつて普通自動車免許を持っていたが、交通違反で取り消しとなった経緯がある。

 では再取得する際になぜ兄の名義で、しかも原付免許を申請したのか─。

 一度免許取り消しになると再取得ができない欠格期間が生じるルールが関係していた。欠格期間中だと思った男は「免許を持っていない兄の名義にすれば取得できる。原付ならば学科試験だけで済む」と考えた。

 さらに、男は免許を申請する際の身分証明書として「顔写真は自分」「名義は兄」のパスポートを提示していたのだ。疑問は重なる。そうした不正なパスポートを取得できるのだろうか…。

 パスポートの申請には、窓口で戸籍謄本や住民票の写しなどに加えて、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類の提示が求められる。外務省によると、顔写真付きではないものでも決められた本人確認書類2点を提示すれば申請できる。ただ、顔写真付きが一つもない場合、親の名前や生年月日などを尋ねて本人であることを確認するという。

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