国の文化審議会が20日、伊勢原市大山で伝承される「大山こまの製作技術」を「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択するように答申した。選択されると、県では9件目、同市では初。選択後の約6割が重要無形民俗文化財に指定されており、関係者は「これを機に伝統を引き継ぐ人が出てきてくれれば」と期待する。
同市教育委員会によると、「大山こま」は江戸時代中期から製作が始まったとされ、当時盛んだった「大山詣り」の土産物として人気になったという。丸みを帯びた重厚な形と芯棒が太いのが特徴で、よく回ることから人生が滞りなく回るとされ、家内安全・商売繁盛などの縁起物として親しまれている。2017年には市の指定文化財に指定された。
製作には木工の旋盤を使うほか、ろくろを用いた形状の切り出しや芯棒の調節、彩色などを行う。木地師の熟練の技が必要とされ、審議会は「地域的特色が顕著で、我が国の挽(ひき)物(もの)や木工製作技術を理解する上で重要」としている。
「伊勢原市大山こま製作技術保存会」の代表で「金子屋」(同市大山)8代目の金子吉延さん(73)は「ありがたいことで驚いた。コツコツと伝統を引き継いできた職人たちのおかげ」と感謝する。一方、「技術をどのように守り、つなぐか。チャンスは少ない」と技術継承に顔を曇らせる。