郷本直也・貴城けいW主演、深井邦彦作・演出 舞台『終わりの行方』開幕 家族だから思うこと、言ってしまうこと。

郷本直也・貴城けいW主演、深井邦彦氏作・演出の舞台『終わりの行方』が開幕した。
深井邦彦(「或る、かぎり」、グッドディス タンス“シリーズ等)の新作書き下ろしとなるストレートプレイ演劇。

老いた父の介護を通して浮き彫りになる家族の問題を、過去と現在を行き来しながら細やかに描いていく。 出演キャストには、熱く人間味のある演技でジャンルを問わず存在感を示す郷本直也、元宝塚トップの貴城けいの 二人を主演に、里村孝雄、小林美江、有薗芳記、舘智子の実力派俳優が脇を固め、辻本みず希、鈴木朝代、岡野一平、遥りさ、長谷場俊紀といった20~30代の若手俳優が出演する。

舞台上のセット、よく見る家、テーブルや椅子、ちゃぶ台、座布団、FAX電話、そして仏壇。ただ、壁をよく見ると汚れが。築年数はちょっと経っているように感じる。
少女と男の子、10代ぐらい、ちゃぶ台の周りでわちゃわちゃと。それから、背後でドスン、という音、うめき声。

時間軸が変わる。年老いた男・陽一(里村孝雄)が床でうめいている、どうにか這いつくばってここまで辿り着いた様子、そこへ旭輝明(郷本直也)と妻・泰子(貴城けい)が帰ってくる。びっくりして駆け寄る夫、だが、妻はただ、立ち尽くして見ているだけ。

“現在”と“過去”を見せる。過去、泰子はまだ少女、懐かしい使い捨てのインスタントカメラがある、そこでおおよその時代がわかる。母親は亡くなった様子、だが、泰子は言う、お母さんが生きている宇宙空間がある、と。SFチックな発言。

“現在”、年老いた親の事を話し合う子供たち(とは言ってもいい大人だが)、老父はいう「お母さんは死んでない」と子供たちは「しっかりしてよ」と。よくある光景、この年老いた父親に一人暮らしはさせられない、夫はいう「お父さん、一緒に住みませんか」と。

ところがこれに妻は難色を示す、「俺、パンツ変えるから」「無理だから」妻にとっては実の父親。どうも過去に何かあった様子。
過去のこと、“回想”という形で舞台上に示される。担任の先生の訪問を受ける、その担任の先生が、亡くなった母親にそっくり、「死ぬほどそっくり」と少女・泰子。

「お母さんって呼んでもいいですか?」「やめろ」「いいですよ」彼らの“団欒”、鍋を囲んで楽しく食事。ひとときの幸福な時間。「家族みたい」「楽しかったら家族ですよ」と。

家族とは何か、「血が繋がっていなかったら家族じゃないのか」というセリフも飛び出す。そして介護問題、泰子はストレートに老父にいう「施設に入ってくれない?」「施設には入らない」「入るしかないでしょう」と泰子。「可哀想」という言葉も飛び出し…だが、当の本人は「可哀想じゃないよ、何が可哀想なの?」と言う。お茶を泰子の顔に浴びせるひと幕も。

次第に明らかになってくる彼らのバックボーン、考え。その切なさ、家族への想い、さりげない会話の中に滲んで見える気持ち。ちょっとしたやりとりや仕草で、実は皆、家族思いであることを感じる。年老いた親の問題、子供たちはまだまだ現役世代ではあっても介護や認知症の問題は大きい。本人は「可哀想じゃない」と強く言い張るその声のトーン。哀れみは、“上から目線”、それは本人にとっては嫌なこと、尊厳というものがある。家族の間でも、そこは大事なところ。そんなやりとりの末、この家族はどこへいくのか。

明快な結論はないが、どこか希望を感じさせる終わり方。タイトルの「終わりの行方」、どこへ向かうのか、それは千差万別。だが、その方向は決して暗いものではない。登場人物全員、どこか愛を感じ、それを大切にしている。だからこそ、出せない結論。ちょっと切なく、ちょっと温かくなれる、そんな作品であった。

深井邦彦より
本日は御来場頂き、誠にありがとう御座います。
今回、作品を作るに辺り稽古する中で伝えるという事は本当に難しいなと痛感しました。
ここに言葉を残し伝える事も俳優には言葉で伝える事も難しい。
ただ、その難しさがあるから人は理解し合いたいのだと思います。
今回の物語も伝える事の難しさが根幹にあります。
家族という不思議な集合体が何を伝えどう終わりに向かい、再度何が始まるのか。
少しでいいので、ほんの少し伝わればいいなと思っております。
最後までごゆっくりご覧ください。

郷本直也より
年明け1発目の稽古の時に金髪丸坊主で現れた深井さんが印象深かったです。覚悟と気合いの現れだったようで…この人、熱い漢だなあって再認識させられました。そんな演出家を囲んで、皆でたくさん悩んで真摯に向き合った1ヶ月間でした。役柄人柄や関係性について自他思う事を投げかけたり受け止めたりとよくディスカッションしました。「家族」の在り方について、各々の考えをぶつけ合って課題を見つけていく作業はとても充実した日々でありました。この作品は、明日の何かしらの糧となるような前向きな物語です。御来場を心よりお待ちしています。

貴城けいより
いよいよ初日です。
この1ヶ月間、深井さん、キャストの皆さんと積み上げては崩し、積み上げては崩し、
を繰り返しながら丁寧にお稽古をしてきました。
ただ、旭泰子として存在すること。
嬉しいです。
私、この作品が大好きです。
だからひたすらやるのみです。
心の機敏を大切に。
「終わりの行方」が皆様の大切な人を改めて感じる作品になりますように。
劇場でお待ちしています!

物語
2022年12月某日、旭陽一(里村孝雄)が一人暮らしをしている自宅の階段から転落し負傷した。 陽一が助けを呼ぼうと這いつくばりながら、リビングに向かっていた所を発見した旭泰子(貴城けい)とその旦那で 婿の旭輝明(郷本直也)。 輝明は驚き、救急車を呼ぼうとするが泰子は動かない。実の父が助けを求めている事をただじっと見ていた。 一週間後、長女の明子(小林美江)、次女の裕子(舘智子)ら家族が集まり、これからの事を話している最中、 陽一が突然『お母さんは死んでいない』と口走る。明子や裕子は、父の痴呆が始まったとショックを受ける中、泰子は淡々と施設に入れるのはどうかと提案する。
家族も知らない陽一と泰子にあった過去とは・・・。

概要
日程・会場:2023年1月25日(水)~1月30日(月) シアター・アルファ東京
作・演出:深井邦彦
出演:郷本直也、貴城けい、里村孝雄、小林美江、有薗芳記
舘 智子、辻本みず希、鈴木朝代、岡野一平、遥りさ、長谷場俊紀
企画制作:スーパーエキセントリックシアター

公式HP:https://www.set1979.com/stage/stageinfo202301/

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