アース・ウィンド&ファイアーの魅力!ハロプロやAKBと相性が良いのはなぜ?  合掌 2月4日はモーリス・ホワイトの命日です(2016年没・享年74)

2016年2月4日、モーリス・ホワイト逝去

今から7年前のことだ。2016年2月4日、モーリス・ホワイトが亡くなったというニュースが飛び込んできた。伝説のファンクバンド “アース・ウインド&ファイアー” の創設者兼リーダー兼リードボーカル兼作曲者兼プロデューサーであった彼は、間違いなくポップミュージックの歴史に名を刻まれる偉大な人物である。でも、訃報を聞いた時、正直なところ僕にはあまりショックはなかった。

と言うのも、アース・ウインド&ファイアー最後のビッグヒットである「レッツ・グルーヴ」が1981年にリリースされてから、その時点で既に35年近くが経っていたし、彼自身も2000年代に入ってからはライブ活動から退いていたからである。なので、むしろこの訃報は、彼に関する久し振りのニュースでもあった。

しかし、だからと言って、彼らの音楽がすっかり疎遠になってしまっていたかというと、全くそんなことはなかった。21世紀になってからも、アース・ウインド&ファイアーの存在を意識する機会は、意外にも頻繁に訪れていたからだ。

例えば、2011年(日本では翌12年)に公開されたフランス映画『最強のふたり(Intouchables)』は、僕も大好きな映画のひとつだが、そのオープニングで2人の主人公フィリップ(フランソワ・クリュゼ)とドリス(オマール・シー)が車の中で歌っていた曲が「セプテンバー」であった。そして、フィリップに「音楽は踊れなきゃ」と言ってドリスが踊り出すシーンでは「ブギー・ワンダーランド」が流れる。どちらもとても印象に残るシーンである。

ブルーノ・マーズも強い影響を受けた「レッツ・グルーヴ」

ブルーノ・マーズが2013年にリリースした「トレジャー」は、「レッツ・グルーヴ」の影響を強く受けていると言われている。実際のところ、曲やサウンドはそれほどでもないが、ビデオクリップは激似である。「レッツ・グルーヴ」のビデオでは、1970年代から80年代にかけて一世を風靡した「スキャニメイト(電子式アナログコンピュータでアニメーション映像を作り出す機器)」が使われているのだが、その映像にインスパイアされた彼は「トレジャー」でこの機器を採用したのだそうだ。

… とまぁ、そんなことをボーっと考えていた時、久し振りにRe:minder編集部から原稿の執筆オファーが届いた。なんでも「特に若い世代やこれから彼らの作品を聴こうとする音楽ファンにアースの魅力が伝わるコラムだと嬉しいです」とのことである。

DREAMS COME TRUEとアース・ウインド&ファイアーの関係とは?

それでは、日本のライトな音楽ファンにアース・ウインド&ファイアーを薦めるには、どうしたらよいだろうか。僕がまず思いついたのが、DREAMS COME TRUEを経由する方法である。リーダーでベーシストの中村正人はモーリス・ホワイト信者としても知られるが、以前、ポップカルチャー専門のウェブメディア『ナタリー』の対談企画の際に、こんな発言をしている(以下、原文ママ)。

ーー だから「決戦は金曜日」も俺はEarth, Wind & Fireの「Let's Groove」とシェリル・リンの「Got to be Real」っていう2曲の曲を合体させて作ったんだけど、今Twitterとか見てると「アースっていうバンドがドリカムをパクってる」っていう人も出てくるわけ(笑)。

(中略)

ーー 俺、アースのモーリス・ホワイトを大尊敬してて、自分の曲に参加してもらったときにモーリスに告白したのね。「私はあなたの作った音楽をさんざんパクって日本で今売れちゃってます」って。そしたらモーリスが「それでいいんだ」って。

つまり、DREAMS COME TRUEの楽曲に慣れ親しむことで、結果的にアース・ウインド&ファイアーの入口に立てるのではないか、という仮説である。

モーニング娘。に注入されたアース・ウインド&ファイアーのエッセンス

そして、次に思いついたのがDANCE☆MANだ。皆さんは果たして彼のことを覚えているだろうか。今から25年くらい前に、70年代のディスコ定番曲に「空耳アワー」的な日本語の歌詞を付けて発表していた日本人ミュージシャンのことである。当然のことながらアース・ウインド&ファイアーの楽曲も出てくるのだが、中でも僕が忘れられないのが「ブギー・ワンダーランド」を下敷きにして作られた「ダンス部 部長南原」という曲だ。これには少し説明が必要だろう。

当時とても人気のあった『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日本テレビ)というTV番組の中に、「ウリナリ芸能人社交ダンス部」という企画コーナーがあった。これは、出演メンバーが本気で社交ダンスの大会を目指すという、言わばサークル活動なのだが、そこの部長を南原清隆(ウッチャンナンチャン)が務めていた。そして、それをネタにしたのが、この「ダンス部 部長南原」である。

実はこの話には続きがある。この「ダンス部 部長南原」をとても気に入ったつんく♂(元シャ乱Q)が、彼がプロデュースしているモーニング娘。の楽曲アレンジをDANCE☆MANに依頼したというのだ。その時に出来上がったのが、皆さんご存知の「LOVEマシーン」である。この大ヒット以降も、「恋のダンスサイト」「ハッピーサマーウェディング」「恋愛レボリューション21」とDANCE☆MANアレンジの楽曲は続いた。

こうしてモーニング娘。楽曲にアース・ウインド&ファイアーのエッセンスが注入された… かどうかは定かではないが、とにかく彼女たちを含むハロー!プロジェクト所属のグループやユニットには、アース・ウインド&ファイアーを彷彿させる楽曲が数多く存在しているらしい。僕はその辺の事情に疎いのでネットで調べてみたのだが、出てくる出てくる…。

黄色5「黄色いお空でBOOM BOOM BOOM」(2000年)やこぶしファクトリー「押忍!こぶし魂」(2016年)は明らかに「ブギー・ワンダーランド」を意識しているし、モーニング娘。「この地球の平和を本気で願ってるんだよ!」(2011年)やアンジュルム「46億年LOVE」(2018年)なんかは楽曲だけでなくビデオクリップにもアース・ウインド&ファイアーの要素が散りばめられている。

女性アイドルグループとの相性の良さ

もちろんアース・ウインド&ファイアーの影響を感じさせるのは、ハロー!プロジェクトに限った話ではない。2011年にアサヒ飲料『WONDA』のCMに使われていたAKB48「これからWonderland」も歌詞の中に思いっきり「Boogie-woogie Wonderland」と出てくるし、曲の雰囲気的にも「シャイニング・スター」に近いものを感じる。

要するに、アース・ウインド&ファイアーは、日本の女性アイドルグループと相性が良いのだ。多分、日本人の情緒に訴えかけるようなメロディとサウンド、色物感のある「ダサかっこいい」「ダサかわいい」団体芸が、ハマりの良い理由なのではないかと思う。

僕からお伝えしたいのは以上だが、とにかく今日採り上げた楽曲のほとんどがYouTubeで無料で聴くことができるので、まずはDREAMS COME TRUEや女性アイドルグループを通じて、アース・ウインド&ファイアーを感じてもらいたいと思う。そして、それはきっと、今は亡きモーリス・ホワイトにとっても本望だと信じたい。

Billboard Hot 100
■ Shining Star / Earth, Wind & Fire(1975年5月24日 全米1位)
■ September / Earth, Wind & Fire(1979年2月10日 全米8位)
■ Got To Be Real / Cheryl Lynn(1979年2月17日 全米12位)
■ Boogie Wonderland / Earth, Wind & Fire With The Emotions(1979年7月14日 全米6位)
■ Let's Groove / Earth, Wind & Fire(1981年12月19日 全米3位)
■ Treasure / Bruno Mars(2013年8月3日 全米5位)

カタリベ: 中川肇

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