並んで輝く“くじら座”の渦巻銀河 ヨーロッパ南天天文台の公開画像を振り返る

【▲ ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)で撮影された渦巻銀河「NGC 799」(下)と「NGC 800」(上)(Credit: ESO)】

こちらは「くじら座」の方向約3億光年先にある渦巻銀河「NGC 799」(下)と「NGC 800」(上)です。アメリカの天文学者ルイス・スウィフトによって1885年に初めて観測されました。

2つの銀河はどちらも地球に対して正面を向けた位置関係にある、いわゆるフェイスオン銀河です。中心部分には古い星が集まっていますが、渦巻銀河の特徴である渦巻腕(渦状腕)では若い青色の星々が幾つもの星団を形成しています。

一口に渦巻銀河と言っても、その形態は渦巻腕の数や巻き付き方などによってそれぞれ異なりますし、中心に棒状構造を持つ棒渦巻銀河に分類されるものもあります。NGC 799の渦巻腕は2本で、棒状構造をぐるりと取り囲むように渦巻いており、リング状の構造を形作っています。いっぽう、NGC 800は明るくて節がある渦巻腕を3本持っています。

渦巻銀河の多様な姿を垣間見せてくれるNGC 799とNGC 800ですが、永遠にこの姿のままではいられないでしょう。接近した銀河は重力を介して何億年もの時間をかけて相互作用することで、すれ違いを繰り返すうちに歪んだ形態に変化したり、衝突・合体したりすることもあるからです。未来を完璧に予測するのは困難ですが、数十億年後に合体して1つの銀河になると予想されている天の川銀河とアンドロメダ銀河のように、NGC 799とNGC 800にも避けられない運命が待ち受けているかもしれません。

冒頭の画像はヨーロッパ南天天文台(ESO)が運営するチリのパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」の分光撮像装置「FORS1」で取得されたデータ(3種類の光学フィルターを使用)をもとに作成され、ESOから「The calm before the storm(嵐の前の静けさ)」のタイトルで2013年8月12日に公開されていたもので、ESOが2023年1月31日付で改めて紹介しています。

Source

  • Image Credit: ESO
  • ESO \- The calm before the storm

文/sorae編集部

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