G1セラピューティクス、トリラシクリブの大腸がん対象の臨床試験中止

By 前田静吾

Insights4 Pharmaの編集責任者の前田(@seigomaeda)です。今日の世界で注目の製薬トップニュースは、G1 Therapeutics社の株価が一日で50%以上下落した、大腸がんの臨床試験のニュースです。

同社のトリラシクリブの大腸がん対象の第3相の試験において、好中球減少症を有意に抑制もこの薬剤が化学療法とベバシズマブを含むレジメンの効果を低下させてしまったようです。そのため、プラセボ群のORRが高いという結果が示され、同社が試験の中止の決定を発表したことによります。[

G1セラピューティクス、トリラシクリブの大腸がん試験中止へ

G1セラピューティック社は月曜日、転移性大腸がん患者を対象とした第III相試験において、化学療法誘発性骨髄抑制剤トリラシクリブが重度の好中球減少症を有意に抑制したものの、化学療法とベバシズマブを含むレジメンの効果を低下させたようだと発表しました。

最高医学責任者のRaj Malik氏は、次のように述べました

「骨髄保護作用と忍容性の改善にもかかわらず、本試験で示さされた全奏功率を含む初期の生存指標は、プラセボ投与患者のデータが有意であった」

第3相PRESERVE 1試験

PRESERVE 1試験は、転移性大腸がん患者326名を対象に、FOLFOXIRI化学療法+ベバシズマブによる3剤併用療法に加え、トリラシクリブを投与した場合の有効性と安全性を評価するために実施されました。

G1セラピューティック社は、導入期の高度好中球減少症の発生および1~4サイクル目の高度好中球減少症の平均期間がともに臨床的に有意に短縮されたことに注目しています。

トリラシクリブを投与された患者は、プラセボと比較して、化学療法誘発性の下痢の発生率も臨床的に意味のある低さで、あらゆるグレードの下痢とグレード3/4の下痢の発生率がそれぞれ30%と50%減少しています。

さらに、トリラシクリブ群では化学療法の減量や遅れが少なく、骨髄保護に関するその他の副次的な指標でもトリラシクリブが有意でした。

プラセボ群のORRが高い。試験の中止へ

しかしながら、抗腫瘍効果のデータに関しては、トリラシクリブ群の全奏功率は50%、プラセボ群は61%であり、生存率の予備的指標もプラセボ群に有意であったと発表しています。

無増悪生存期間と全生存期間のエンドポイントが達成される可能性が低いことから、同社はPRESERVE 1試験の中止を決定しました。

このニュースにより株価が53%も下落した同社は、本試験のデータモニタリング委員会も独自に同じ結論に達したと述べている。

「これらの結果は…異なる化学療法のバックボーンを用いた他の腫瘍で観察された結果と矛盾しています」

G1セラピューティック社は、広範なステージの小細胞肺がん(SCLC)およびトリプルネガティブ乳がん患者において、CDK4/6阻害剤と異なる化学療法を併用した研究では、この「生存率低下のシグナル」は示されなかったと述べている。

より大きなチャンスと見なされていた大腸がん対象レジメン

化学療法誘発性骨髄抑制剤としてトリラシクリブは、広範なステージの小細胞肺がん(SCLC)に対してある種の化学療法を受けている成人において、化学療法による骨髄抑制の頻度を減らすために2021年にFDAから承認を獲得しています。

Coselaとして販売されているこの薬剤は、最近、Simcereと提携している中国において、広範なステージのSCLCに対するプラチナ/エトポシド含有レジメンの前に投与した場合に、成人の化学療法誘発性骨髄抑制の発生を減少させる薬剤として承認を取得しています。

PRESERVE 1試験の結果発表に先立ち、H.C. Wainwrightのアナリストが、G1セラピューティクスがFOLFOXIRIレジメンを若年で健康な患者以外にも使用できるようにする可能性があることから、大腸がんにおけるトリラシクリブの機会は広範囲ステージのSCLCにおける5倍となる可能性を示唆、より多くの適応症で承認されれば、Coselaの売上は2027年にほぼ5億ドルに達する可能性があると付け加えていました。

参照記事

G1 Therapeutics Announces Top Line Results from Pivotal Phase 3 Trial of Trilaciclib in Patients Receiving Triplet Therapy with FOLFOXIRI + Bevacizumab for Metastatic Colorectal Cancer (CRC) (PRESERVE 1)

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