故郷と母校へ恩返しを―甲子園春夏連覇の島袋洋奨が興南高復帰を決めた胸の内

昨季限りでソフトバンクを退団し現役引退した島袋洋奨氏【写真:荒川祐史】

会社員を辞めて故郷へ「これまで教わってきたことを教え、生徒たちの助けになりたい」

 2010年の甲子園春夏連覇投手で元ソフトバンクの島袋洋奨氏が、4月1日から母校の興南高に復帰した。まずは事務職員として働き始める。現時点では野球部の指導はできず、12月の講習会で学生野球資格の回復を目指す。

 4月1日、自身のインスタグラムで興南高へ復帰したことを報告した島袋。Full-Countの取材に対して「指導者として、これまで教わってきたことを教え、生徒たちの助けになりたいと思い、沖縄に戻ることを決めました」と胸の内を明かしてくれた。

 2010年に甲子園春夏連覇を果たした島袋。高校卒業後は中央大に進み、2014年のドラフト5位でソフトバンクに入団しプロ入りした。ただ、プロでは1軍登板2試合に終わった。昨オフにソフトバンクから戦力外通告を受けて、現役を退くことを決めた。

 引退後は一度は会社員になることを決めて働き始めた。ただ、故郷である沖縄と母校、そして夢だった指導者への想いは消えず、昨年末、ずっと進路を気にかけてくれていた恩師である我喜屋優監督に想いを伝えた。もちろん心は揺れた。なったばかりの会社員をすぐ辞めることへの葛藤もあった。

 ただ、故郷と母校、そして恩師へ恩返ししたい想いが勝った。「僕のために時間を作っていただき、お会いさせてもらって、社会勉強をして指導者を目指して頑張りたいと伝えさせていただきました」。まずは事務員として母校で働き、指導者の道を目指すことを決断した。

 まだ野球部で指導することはできない。学生野球を指導する資格を島袋はまだ持っていないからだ。当面の目標は学生野球資格の回復になる。12月にある研修会に参加し、資格を回復して、ようやく学生への指導が可能になる。「まずは資格を取って、いつか教員免許も取得したいと思っています」と、最終的には教員になることも目指すという。

「社会を勉強して、指導者としての勉強もしていきたいです。指導者として、これまでに教わったことを教えて選手たちの助けになりたいと思っています。指導者として甲子園に戻りたいという気持ちは今はそれほどありません。それよりも、人材育成に重きを置いていきたいと思っています。やるからには上は目指していきたいですけど、大事なのはそれだけではないので」

 故郷・沖縄に戻って歩み出した人生の再スタート。第一子も生まれたばかり。沖縄のため、母校のため、そして家族のため。甲子園春夏連覇を成し遂げ沖縄を熱狂、歓喜させた島袋洋奨が、今度は故郷へ恩を返すために生きていく。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

© 株式会社Creative2