「五島の人に感謝しかない」 NHK支局・西川さん引退 ニュース伝えて半世紀

約半世紀にわたって島の事象を伝え、島民への感謝を語る西川さん=五島市

 48年間、五島のニュースや四季の話題を伝えてきたNHK長崎放送局五島支局の通信員、西川哲夫さん(74)=長崎県五島市=が3月末で引退した。西川さんはこの半世紀に「島の人たちの協力がないと取材できなかった。感謝しかない」と振り返った。
 大学卒業後、長崎市で団体職員として勤務。同局通信員だった父巖さんが死去したことから、1975年に26歳で島に戻り後を継いだ。1週間の研修後、初取材は農業試験場の落成式。フィルムを定期船に載せ長崎市に送った。インスタントカメラで撮った写真も電送しニュースで併用する時代だった。
 海に囲まれた五島列島。海の事故や事件取材が印象に残る。
 81年、男女群島沖で死者・行方不明者を出した瀬渡し船の転覆事故では、福江港にえい航された船の中で奇跡的に生存者が見つかり、騒然とする現場で取材した。
 89年、三井楽町の漁港に漂着した中国人の偽装難民事件。ちょうどこの頃、長崎放送局に直接、映像を送れるように。撮ったばかりのニュースを他社に先駆けて全国に流すことができ、誇らしかった。
 でも、島の通信員の一番の喜びは「五島は良い所と、島内外の人たちに知ってもらうこと」。ニュースを見て、島を離れた出身者が喜んでくれるのも励み。60歳の定年後も二次離島の子どもたちの生き生きとした表情などにカメラを向け続けた。
 一方、人口減少や少子高齢化などの影響で「クロの追い込み漁」や「幾久山の綱引き」など伝統漁法や地域の行事、祭りが徐々に途絶え、取材することができなくなったのが寂しい。
 4月から義理の息子に仕事を譲った。「島の宣伝マンになるという気持ちだったが、果たしてどこまでできたか。五島の良さを伝えられていたらうれしい」と表情を緩めた。

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