【サンデー美術館】 No.299 「〈婆バクハツ!〉シリーズ」

▲内藤正敏 高山稲荷 1970年

 大正元年生まれの私の祖母は生前、夜の街でクラブのママをしていた。と書くと妖艶なる「夜の蝶」を思い浮かべる向きもあるかもしれないが、どちらかというと雑貨屋のおかみ風。小間物屋の娘に生まれ、銀行に就職した後にお菓子問屋に嫁いだ筈が、間貸ししていたクラブがやめることになったのでそれをそのまま引き継いだ。昭和30年ごろの話である。入口の番台に座って、夜の世界に入ってくるお客さんにご挨拶をするのがいつもの役回り。最後は、「奥さん大事にしなさいよ」といって家路につくお客さんを送り出す。

 みんなから「おかあちゃん」と呼ばれる、「夜の蝶」の奇種だった。

 さて、闇から浮かび上がっているこのちょっと怖い「夜の蝶」(?)は、津軽のイタコの面々・・・。

 ごめんなさい。思い出話をしすぎて紙幅が尽きた。詳しい話は今週土曜2時からのギャラリートークでお話しします。

 ※コレクション展「『奇』を撮る」(6月25日まで)展示作品より

山口県立美術館副館長 河野 通孝

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