ダフリトップの原因は「前傾の浅さ」にあった レッスンの最前線からLIVEルポ

これからお届けするレッスンのやり取りは、感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新技術を使ったいまどきのコーチたちのリアルなレッスンの一部始終を生レポート。人の振り見て我が振り…直せます。

ダフリ・トップ、引っかけに悩む楠田さん(50代・男性・平均スコア115)

115前後の平均スコアを安定して100切りをしたいと語る

ゴルフ歴12年、ベストスコア95の楠田光一郎(くすだこういちろう)さん。
安定した100切りを目指しているが、ラウンドではダフリやトップ、引っかけを連発し、スコアをまとめることができない。積極的にレッスンを受けるなど研究熱心で、上達への意欲は人一倍強く、「直すべきポイントを常に模索している」と語る。

前傾が浅いアドレスに

体が起き上がったアドレスで、重心もかかと側にある

まずはスイングを後方から確認すると、アドレスで楠田さん(写真:左)の前傾角度は「20度」。これに対し、ツアープロ(写真:右)の前傾角度は「40度」(平均値)と深く、重心位置も母指球にある。楠田さんは前傾角度が浅く、全体的に後ろに体重がかかったアドレスになっている。

腰と肩の捻転差が増幅したままトップへと向かう

バックスイングを確認すると、プロのハーフウェイバック時の回転角度は、「肩42度・腰18度」(捻転差24度)、トップ時では、「肩88度・腰44度」(捻転差差40度)とハーフウェイバック時とトップの捻転差を比べると、数値が倍近く増えている

アドレスでの姿勢が原因でトップやダフリ、ひっかけに

前傾角度が浅いことで特に上体が回り過ぎている

これに対し、楠田さんは「肩74度・腰34度」(捻転差40度)、トップでは「肩100度・腰55度」(捻転差45度)と捻転差はほぼ変わらない。「前傾角度が浅いことで体が必要以上に回転しやすく、ハーフウェイバック時ですでに上体を回しすぎています。プロはシャフトが地面と平行になった時点から、より捻転差が深まってトップへ向かっています」と担当する中根英勝(なかねひでかつ)コーチは説明する。捻転差はトップに行くにつれて増えていくのが理想だ。

インパクトでは肩も腰も開いて当たるのが理想(より腰のほうが開く)

さらにインパクトでは、「プロが『肩31度オープン・腰43度オープン』に対し、楠田さんは『肩3度クローズ・腰2度オープン』に。これは手で上げたクラブを体を回転させずにそのまま手で下ろしている証拠です」(中根コーチ)。

ボール位置にも問題アリ。右足寄りのボールを急激にクラブを返して当てていた

ハンドドファーストで強いインパクトを意識するあまりボールが右寄りに

さらにボール位置にも問題が。正面からの映像を確認するとボール位置が右足寄りに。「ショートアイアンでもボール位置は体の中心か、ボール1個分左足側(ターゲット方向)が理想とされていますが、楠田さんはボールが右足寄りすぎています。手の位置、頭の位置は良いポジションに収まっていますが、ボールが右足寄りすぎると、バックスイングで頭が右に動きやすくなります。頭が右に動くことが、その後の悪い動きにつながります」(中根コーチ)

右肩が下がることでフェースが開きインパクトで急激に戻す動きが見られる

「頭が右に動いたり、捻転が足りなかったりと一連の動きが影響し、ダウンスイングでば右に体重が残りやすく、右肩も下がっています。連動する形で左手が上を向きフェースも上を向きやすい。そのままいくとフェースが開いて当たるので、インパクトに向かって開いたフェースを手で急激に返しています右肩が下がったまま当てれば『ダフリ』、上体が起き上がれば『トップや引っかけ』になります。対策としては、アドレスの姿勢を改善して前傾角度を深くしたいところ。そうすればスイングの軌道は大きく変わってきます。その結果、インパクト付近での急激なフェースターンがなくなり、ミスヒットも減ってくでしょう」と改善点を提示した。

正しいアドレスは「両手をひざへポン」

骨盤の傾きを意識しながら背骨を真っすぐなまま前に傾ける

アドレスを直すため、中根コーチが提案したのが「両手ひざポン」だ。まず両手を足の付け根辺りに置いて直立する。次に上半身を前倒させながら足に沿って手を滑らせ、指先がひざ頭に触れたところが最終的な前傾角度。そこから手を前に出してクラブを持つと正しいアドレスの姿勢になる。「猫背にならないように背骨を真っすぐにしたまま前に傾け、上半身ごと前に倒しながら足に沿って手を滑らせるのがポイントです。ボール位置も体の中心よりボール1個分左にセットすることで、バックスイング時の頭の移動が少なくなると思います」(中根コーチ)。

骨盤から前傾できているのが分かる

ドリル後の映像で見比べてみると、「20度」だった前傾角度が「36度」になり、プロの数値に近づいた。重心位置も母指球近くまで移動し、バランスのとれたアドレスへと変化した。

回転角度を比較すると、ハーフウェイバック時の「肩74度・腰34度」が「肩61度・腰30度」となり、肩の回し過ぎが抑えられている。トップ時点では「肩100度・腰55度」が「肩104度・腰54度」と数値の変化は少ないが、ハーフウェイバック時とトップの捻転差を比べると数値も改善され、捻転を使ったトップへと変化したことを意味している。

ダウンスイングで右肩が下がる動きが抑えられ、手首のリリースタイミングに変化が

さらに、ダウンスイングでは左への体重移動もしっかりでき、クラブのリリースタイミングにも変化が。これによって、インパクト付近で急激にフェースを返す動きがなくなり、安定したインパクトを迎えることができた。

ハンドドファーストで強いインパクト意識するあまり

アドレスの前傾角度やボール位置は基本の「き」

「これまでレッスンを積極的に受けてきた楠田さんは、『体をどう動かすか、どう使うか』よりも『ボールを打つ』意識が強くなっていました。また、『ハンドファーストで強いインパクト』を目指すため、最初からハンドファーストの形を意識し過ぎてボールが右に寄っていました。アドレスの前傾角度やボール位置は基本の『き』。ここがズレてしまうとその後の動きに影響を与えます。『ボールに当たらない』、『調子が悪くなった』と感じたら、アドレスを見直すと良いと思います」と中根コーチは最後に締めた。

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