水素の利活用を支えるインフラとして、三菱化工機(川崎市川崎区)の水素製造装置が注目されている。従来は工業用途で使われていたが、水素の利活用に世間の関心が高まる中、水素ステーション(ST)での利用も増加。水素社会や循環型社会の実現に向けた技術開発にも挑戦している。
同社の主力製品は、小型水素製造装置「HyGeia」。都市ガスや液化石油(LP)ガス、ナフサを原料にオンサイト(現地)で水素を製造する。
原料圧縮機や脱硫器、改質器、機器同士をつなぐ配管などがパッケージ化されているため、現場に導入しやすいのが特長。主に、半導体や光ファイバーといった水素を用いる工場への導入が多く、2005年の市場投入以来、100基超の納入実績があるという。
近年は水素STへの導入も増えており、17年には同区大川町の自社事業所にも設置。実証用として、装置の改良や同領域の研究を進めている。
水素の最大のメリットは利用時に二酸化炭素(CO2)が発生しない点だ。ただ、同社の水素製造装置は、化石燃料である都市ガスやLPガスが原料のため、製造時にCO2を排出する。
太陽光発電などの再生可能エネルギーで水を電気分解して水素を製造する手法と比べて製造効率が良いものの、CO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(CN)」を実現するには、この課題を克服する必要があった。
同社が取り組むのが、排出したCO2を有効利用する「CCU」の研究だ。
21年には自社の水素STに藻類の培養装置を併設。装置から排出するCO2の一部を、藻類の光合成に利用している。培養された藻類は、バイオマス燃料に加工することも可能だ。
研究開発部の谷口浩之部長は「CCU技術が実用化されれば、化石燃料由来の水素もCNな燃料になる」と期待を寄せる。