後絶たぬ特殊詐欺、水際で阻止!新潟県警長岡署、民間と連携し不審電話検知サービスなどPR 管内被害額、昨年1年間に迫る1213万円

NTT東日本新潟支店と長岡署が合同で行った特殊詐欺防止の広報活動=5月、長岡市呉服町2

 特殊詐欺の被害が後を絶たない。新潟県警長岡署管内でも2021年は17件で計4046万円、22年は5件で計1382万円の被害届があった。今年も5月末で3件計1213万円と、既に昨年1年間の額に近い被害が出ている。民間事業者と長岡署は連携し、詐欺の端緒となる怪しい電話を検知するサービスや、コンビニエンスストア店員らによる声かけという水際対策で警戒を続ける。(長岡支社・佐藤薫)

 NTT東日本は特殊詐欺対策として2020年、専用のアダプターを固定電話に設置すると、通話内容をAI(人工知能)が解析し、特殊詐欺が疑われる場合は自動音声の電話やメールで家族に連絡する仕組みを導入した。

 今年5月には、必要な初期費用と月額利用料を新潟県を含む同社管内の5千人限定で無料にするサービスを開始。NTT東日本新潟支店と長岡署は5月末、高齢者の住む住宅を訪問し、サービスを紹介するチラシを配った。

 市内の80代女性は「離れて暮らす子どもも心配しているようだ。加入を考えたい」と前向きに語った。

 新潟支店の德山隆太郞支店長は「川上で蛇口を閉めるようなサービス。高度になっていく詐欺の手口にAIで対処していきたい」と力を込める。

 特殊詐欺被害を、ATMのある金融機関やコンビニの水際で防いだ例も多い。長岡署管内では銀行員やコンビニ店員らの声かけで防いだ詐欺は、21年に19件、22年に24件、今年は5月末までに9件あった。「現状では最も効果的な被害防止」(長岡署)といわれる。

 長岡市石内1のローソン長岡石内一丁目店のオーナー今井貴章さん(39)と、妻で従業員のさとみさん(36)の2人は、21年から23年にかけて3件の特殊詐欺を防いだ。

 3件はいずれも電子マネーなどを購入させる架空料金請求詐欺で、被害を受けそうになったのは60代から70代の男女だった。高額のカードを買おうとしており、購入目的を尋ね、説得して防いだ。

 店は住宅街に位置し、客層も高齢者が多い。さとみさんは「不安なことをすぐ相談してもらえる雰囲気づくりを意識していたのが奏功したと思う」と話す。

 セブン-イレブン長岡呉服町店(呉服町1)の武田美和子さん(59)も1月中旬、80代女性が高額の電子マネーカードを購入するのを食い止めた。

 ただ水際対策は有効とはいえ、店側にとって客を不快にしないかという悩みもある。武田さんは「トラブルになる可能性もあったが、勇気を出して声をかけることができよかった」と振り返る。

 だまされそうになった人にどうやって手を差し伸べるのか。特殊詐欺対策からみえてくるのは、それがAIであれ、人であれ、被害者を孤立させないことが大事になるということだ。

 長岡署の中村敏彦生活安全課長は「不審な電話が来たらまず誰かに相談してほしい。コンビニなどを利用する方も、電話をしながらATMを使う人など少しでも怪しく思うことがあれば、店員や行員、警察に相談してもらいたい」と協力を呼びかけている。

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