食害や開門請求は棄却 諫干農地の損賠訴訟 公社の営農妨害認め、支払い命令 長崎地裁

判決に悔しさをにじませる大﨑さん(中央)ら原告=長崎市築町、メルカつきまち

 国営諫早湾干拓事業の干拓地に入植した営農者らが農業被害を受けたとして、国や県、農地を所有する県農業振興公社に計6300万円の損害賠償を求めた訴訟で、長崎地裁(天川博義裁判長)は27日、撤退した原告1人への営農妨害を認め、約49万円を支払うよう公社に命じた。潮受け堤防閉め切りや調整池造成に起因してカモ食害や寒害、高温障害が生じたなどとする訴えや、同事業を巡る一連の裁判で営農者としては初めてだった開門請求についてはいずれも退けた。原告側は控訴する方針。
 原告は諫干農地で営農が始まった2008年に入植した3社と1人。うち、13年に撤退した1社と1人以外は、公社から農地の明け渡しを求められている。
 天川裁判長は判決理由で、公社が10年7月ごろから約8カ月間、原告1人の耕作地の一部に同意なくロープなどを張って作付けを制限し、指導の範囲を超えて営農を妨害したと認定した。
 一方、原告らは裁判で「広大な調整池を造れば渡り鳥が群生し、作物を食い荒らす被害が容易に予見できたのに(県などが)被害防止の備えを怠った」「優良農地だと宣伝していたのに実際は荒れ地だった」としてカモ食害や排水不良による被害を主張。だが判決は「堤防閉め切りや調整池の造成でカモ食害が増加したとは認められない」などといずれも棄却した。
 明け渡しを求められている2社による開門請求についても、公社が農地利用権の再設定を拒否したため原告に賃借権はないとして「開門請求は前提を欠き、理由がない」と退けた。
 判決は松永晋介裁判長が代読した。

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