瀬戸内海の絶景を眺めながら、極上の“ととのい”を体験できるサウナがあります。
DENIM HOSTEL float内にある、「浮サウナ」(ふうサウナ)です。
景色はもちろん、訪れてから帰るまでのすべてが浮サウナでしかできない体験ばかり。
オープン以降、ファンを増やし続けています。
どのような特別な体験ができるのか、体験に込めた思いも含めて取材しました。
浮サウナとは
浮サウナとは、倉敷市児島にあるDENIM HOSTEL float(以下、float)内のサウナ施設です。
2022年3月7日(サウナの日)にオープンしました。
1日4回・90分制で、最大4名まで予約可能です。(要予約)
貸し切りではないため、4名以下で予約すると他のお客さんと一緒にサウナを体験する場合があります。
施設受付にて、サウナ・チェックイン用紙の記入や着替え場所などの案内があるため、開始10分前には到着するようにしましょう。
サウナと聞くと、温泉施設の屋内にあるものをイメージする人が多いかもしれませんが、浮サウナは屋外にあります。
また箱型ではなく、円柱型をしているのも特徴です。
水風呂や外気浴スペースもあり、瀬戸内海や王子が岳の新鮮な空気を全身で感じられます。
円柱型サウナ「バレルサウナ」とは
浮サウナで体験できる円柱型のサウナは、「バレルサウナ」と呼ばれています。
「バレル」とは「樽(たる)」という意味。
バレルサウナとは、木製の樽型の施設にストーブを設置したサウナのことをいいます。
日本ではあまり見ない形をしていますが、フィンランドなどのサウナ大国では一般的なサウナの種類です。
浮サウナで採用しているバレルサウナは、totonou Japan株式会社が提供しているエストニア産のバレルサウナ。
エストニアも、フィンランドと同様にサウナ大国なんですよ。
円柱型のバレルサウナは、箱型のサウナ(キャビンサウナ)と比べ、ロウリュウしたときに熱が循環しやすいのがメリットです。
短時間でいい汗を流せる、気持ちの良い体験ができます。
なぜエストニア産のバレルサウナを採用したのかは、後半のインタビューにて。
浮サウナでしか味わえない、“ととのう”体験の数々
浮サウナで見る瀬戸内海は、一度見たら忘れないでしょう。
ただ、浮サウナにはここしでか味わえない体験が他にも多くあります。
浮サウナならではの“ととのう”体験の紹介です。
デニムでできた水着やサウナハットなど、アイテムのレンタル
浮サウナは屋外施設かつ混浴を基本としているため、水着の着用が必須。
持参もいいですが、おすすめはITONAMIの水着やアイテムをレンタルすることです。
浮サウナを運営する株式会社ITONAMI(いとなみ)は、アパレルブランド「ITONAMI」も運営しています。
浮サウナでレンタルできるアイテムは、ITONAMIが手がけたものがほとんど。
水着とサウナハットには、デニム素材が使われていて、デニム産地である倉敷市児島ならではの体験ができます。
この地で思いを持って作られたアイテムで、ととのう準備をしてみませんか。
季節によって香りが変化する、セルフロウリュウ
水着に着替え、チェックインを済ませたら、いよいよ浮サウナへ。
扉を開くと、まるで絵画のような瀬戸内海の絶景に圧倒されます。
雄大な瀬戸内海を眺めながら、タイミングを見て体験してほしいのが「セルフロウリュウ」です。
ロウリュウとは、熱したサウナストーンに水をかけて上記を発生させること。
室温が上がりやすく、蒸気を浴びることで汗を出すのをより促せます。
浮サウナのセルフロウリュウで使用している水は、季節によって変わるアロマ水です。
取材時はコーラロウリュウの期間でしたが、過去にはみかんロウリュウや、カカオロウリュウをおこなっていたことも。
ロウリュウの種類は、浮サウナのInstagramから確認できます。
水風呂は、信楽焼の浴槽で
約10分間、サウナで汗を出したあとは、扉を出て左側にある水風呂へ。
バレルサウナの空間を五感で味わったあとの水風呂は格別です。
水風呂の浴槽は、浮サウナのために設計した信楽焼(しがらきやき)でできています。
大人ひとりが入ってちょうどいいサイズの浴槽からは、もちろん瀬戸内海が。
全身で蒸気を浴びたあとは、水風呂で体をリセットしましょう。
波の音を聞きながら、木陰で外気浴
水風呂の後は、並べられているインフィニティチェアで体験できる外気浴が待っています。
椅子をスライドさせて寝転んでいるような状態にすると、さらに気持ちがいいですよ。
外気浴スペースのすぐそばには大きな木があるので、木陰(こかげ)でゆっくりと“ととのう”時間を過ごせます。
目をつぶって耳を澄ませると、波の音や木々の葉が風でゆれる音が。
外気浴でさらに五感を解放させて、極上の“ととのい”を体験してみてください。
時間いっぱいにととのう時間を過ごしたら、シャワールームへ。
汗を洗い流し、スッキリした状態で浮サウナをあとにしましょう。
ととのったあとは、オリジナルのサ飯やドリンクを
90分間、存分に浮サウナを堪能(たんのう)したあとは、まだ楽しみが残っています。
オリジナルのサ飯(サウナのあとに食べるご飯)やドリンクをぜひ味わってください。
サ飯は定番メニューのキーマカレーと、タイミングによっては季節限定の品が。
取材時は、白子麻婆丼がありました。
汗をかいてエネルギーを消費したあとは、浮サウナを体験した人しか味わえない食事を楽しんでみては。
またドリンクでも、浮サウナでの体験を楽しめます。
アロマ水にまつわるドリンクが味わえるのです。
取材時は、コーラロウリュウの時期にちなんで「クラフトコーラフロート」をおすすめしていました。
クラフトコーラフロートは、DENIM HOSTEL float内のレストラン「pile」にて通常メニューで楽しめます
浮サウナはサウナ時間だけでなく、水着などをレンタルし、飲食を楽しむところまでが“ととのう”時間といえます。
そんな“体験”にこだわって浮サウナを運営するのは、株式会社ITONAMI代表取締役の島田舜介(しまだ しゅんすけ)さんです。
そしてエストニア産のバレルサウナを提供しているのは、totonou Japan株式会社取締役の木村新(きむら しん)さん。
浮サウナを作った二人に、浮サウナ設立の経緯や、体験へのこだわりを聞きました。
浮サウナを手がけた二人にインタビュー
株式会社ITONAMI代表取締役の島田舜介さんと、totonou Japan株式会社取締役の木村新さんに、浮サウナ設立の経緯や体験へのこだわり、オープンから今までの思いなどを聞きました。
冬のアクティビティを作りたかった
──floatにサウナを作ることになったきっかけを教えてください。
島田(敬称略)──
最初のきっかけは、冬のアクティビティがあればいいなと思ったことでした。
2019年9月にfloatがオープンしてから何シーズンか過ごすなかで、夏のアクティビティは確立してきたんです。
瀬戸内海が目の前にある立地なので、海に入って遊べますし。
冬は閑散期なので、冬でも体験できるものとしてサウナを検討しはじめました。
最終的に導入を決めたのは、木村さんとの出会いです。
floatに何度か宿泊しに来てくれるなかで「サウナの輸入事業を始めるんだ」という話を聞きまして。
木村さんからエストニア産のバレルサウナの話を聞くうちに、floatに合いそうだなと思えたのが決め手でした。
木村(敬称略)──
floatへは友達に誘われ、ワーケーションで訪れていました。
部屋から瀬戸内海を見ながら仕事すると、本当にリフレッシュになって。
floatで何度か過ごしていたからこそ、僕もバレルサウナはfloatにぴったりだと思いました。
バレルサウナの特徴は、デザイン性や耐久性
──totonou Japan株式会社では、なぜエストニア産のバレルサウナを取り扱っているのですか?
木村──
最初のきっかけは、大学生からの友達であり、共同創業者でもある齋藤(さいとう)がエストニアに滞在したことでした。
齋藤とはサウナブーム以前から、国内のサウナや温浴施設によく行っていまして。
彼がエストニアに行ってからも連絡は頻繁(ひんぱん)にとっていたのですが、話を聞くと実はエストニアにはサウナが広く普及していることが判明しました。
バレルサウナの存在も齋藤から教えてもらったんです。
やがて新型コロナウイルス感染症が流行し、サウナ人気が高まったためどこのサウナも混雑してきて。
試しにバレルサウナを調べてみると買えない値段ではないとわかったので、プライベート用で一つ買ってみることにしました。
そのようすをSNSに投稿すると、反応が良かったんです。
「これだけ問い合わせが来るのであれば、輸入してみようか」と事業をスタートさせました。
──エストニア産バレルサウナの特徴を教えてください。
木村──
おもに三つの特徴があります。
一つ目はデザイン性です。外観が丸くてかわいいですよね。
そしてfloatのように窓をつけると、周囲の景色をサウナのなかから楽しめるようになります。
屋外に設置するサウナらしい特徴です。
二つ目は木材の加工法です。
サーモ加工という技術で、熱での処理により木に含まれる水分量を低下させ乾燥させています。
サーモ加工した木材をサーモウッドと呼ぶのですが、木材の膨張や収縮を防げるのが特徴です。
熱加工しているので、香ばしい香りがするのも特徴。
もしサーモウッドのサウナがあったら、僕たちは香りでサーモウッドとわかるんです。
三つ目は木材の厚さ。私たちが輸入しているのは42mmです。
42mmという厚さは、気温が非常に低い冬の北欧でもしっかりとサウナ室内を保温するために設計されています。
厚い分、耐久性や耐熱性に優れているのが特徴です。
サウナストーンは矢掛町の「白桜みかげ」
──初めて浮サウナを体験したときはどうでしたか?
島田──
すごくいいなと思って、オープンまでの期間は連日入っていましたね。
冬にも最高なアクティビティができたなと思いました。
あとは浮サウナでロウリュウをしたとき、いいサウナストーンが見つかって良かったなと思って。
浮サウナでは矢掛町(やかげちょう)で採れる「白桜みかげ」(はくおうみかげ)を使っています。
初めは「石を使いたい」というだけで問い合わせたのですが、採石場に行って話を伺うと、採掘した9割以上の石は使えないことを知りました。
少しでも傷が入っていたり、模様があったりすると商品としては使えないようです。
とはいえ別で加工したり、販売したりしているわけでもなかったため「使っていいよ」と快く言ってくださいました。
持ち帰って実際にアロマ水をかけてみると、熱に負けて割れることもなく使えたんです。
お客さんが白桜みかげのことを知り、さらには倉敷を知る機会になったら、なおうれしいなと思いました。
一連の体験を思い出に
──浮サウナは、サウナとしての体験はもちろん、デニムで作られた水着のレンタルから飲食まで、すべてを一連の流れで体験して楽しめるのだなと感じています。白桜みかげもそうですが、すべての物事に意味があるのだな、と。
島田──
ここまで体験として徹底しているサウナ施設はあまりないですよね。岡山ではとくに。
ITONAMIがおこなっていることを、お客様には体験として感じてほしいなと思っています。
浮サウナでのセルフロウリュウでの体験と、飲食とをリンクさせているのもその意図があるんです。
以前「カカオロウリュウ」をしていたときには、白桜みかげを提供いただいている石材屋さんが手がけている、石臼で挽いたカカオで作ったチョコレートをスイーツやドリンクとして提供していました。
そうやって、浮サウナでの経験が、地域を知るきっかけになる。
浮サウナでのサウナ以外の時間も含めて、ゆっくりとした時間のなかで僕たちの活動を感じてもらえたらうれしいです。
体験から、会話が生まれる
──オープン後、お客さんからはどのような反応がありましたか?
島田──
想定していた2~3倍はお客様が来て、驚いています。
floatの宿泊者をメインに体験いただくサウナになるかと思っていましたが、純粋に浮サウナだけを楽しみに訪れるかたが多いです。
何度か通ってくださるかたもいて、うれしく思っています。
あとはやはり、僕らの取り組みを体験してくださるのがうれしいですね。
とくに水着やサウナハットのレンタルは多いんですよ。
僕たちのITONAMIというブランドでアイテムを作っているとわかって来てくださるのが、ありがたいなと思います。
──ITONAMIとしての思いがお客さんに届いていますね。
島田──
浮サウナでの体験が、お客様同士の会話が生まれるきっかけにもなっているみたいです。
サウナで会話することって日本ではあまりないのですが、浮サウナでは同じ時間をたまたま予約したかた同士が仲良くなっていて。
浮サウナを体験したあと、一緒にごはんを食べに行っているかたもいました(笑)
木村──
それは面白いですね。
日本では珍しくても、エストニアではサウナで仲良くなるのは当たり前なので。
バレルサウナを純粋にサウナとして使っているかたが多いなか、floatではサウナでの体験を最大限良いものにしようとしてくださっているのがよくわかります。
浮サウナにかかわる物事一つひとつを、ここでしかできない体験としてお客様に提供されているのは本当に素敵です。
浮サウナでしかできない経験を自由に楽しんで
──最後にメッセージをお願いします。
島田──
浮サウナは、サウナに入っている時間だけではなく、前後の時間も含めた体験として理想的な形で運営できているかなと思います。
サウナストーンの話、アロマ水の話など、僕たちの取り組みをお客様に深く知ってもらえる機会をこれからも作っていきたいです。
浮サウナまたはfloatでの時間を、ぜひゆっくりと過ごしていってください。
木村──
サウナは自由に楽しんでもらいたいという思いが強いです。
ロウリュウや水風呂、外気浴など、サウナには楽しめる要素が多くあります。
ぜひいろいろ試して遊びながら過ごしていただきたいですし、そのなかで浮サウナでしかできない経験を楽しんでほしいと思います。
おわりに
筆者は県外の友人が岡山に遊びに来るたび、floatや浮サウナへ一緒に行きます。
瀬戸内海の景色を楽しめるだけでなく、岡山で思いを持って活動しているヒト・モノ・コトに出会えるからです。
取材を経て、浮サウナでの時間をサウナに入っている時間以外も含めてゆっくりと過ごしたくなる理由がわかった気がしました。
浮サウナでしか味わえない“ととのい”の時間を、体感してみませんか。