【横浜鶴見女性刺殺事件】後絶たぬデートDV被害 周囲にできることとは 「あなたは悪くない」と伝えて

デートDVの被害者支援や啓発に取り組む阿部真紀理事長

 「デートDV(交際相手からの暴力)」が後を絶たない。横浜市鶴見区で起きた刺殺事件の被害女性は、元交際相手から首を絞められるなどの暴力を受けていた。被害に気付いた周囲は何ができるのか。被害者支援に取り組む認定NPO法人「エンパワメントかながわ」(横浜市神奈川区)の阿部真紀理事長は「『何があってもあなたは暴力を受けていい存在ではない』と伝え続けてほしい」と訴える。

 阿部さんによるとデートDVは、暴力の後に相手から謝られたり、優しくされたりする中で被害者が「自分が悪い」「自分たちで何とかできる」と思い込まされていく傾向がある。元々好きな相手であることに加え、暴力と愛情を何度も繰り返しながら行為がエスカレートするため、被害を自覚することや認めることが難しくなる。さらに「別れたら殺す」などの言葉で脅された被害者は「交際をやめたらもっと怖いことが起きる」と考えてしまうため、別れを決断することは容易でないという。

 諸外国ではデートDVに対して加害者を罰したり、保護命令が下されたりするが、日本の現行法では被害者が強く保護を求めない限り警察も動きにくい状況にあると指摘する。だからこそ、被害に気付いた人たちにできることがある。阿部さんは「思い込みを解き放つことができるのは周囲の人たち。気付いた人が互いにつながり、『あなたは悪くない』『助けてもらっていい』と伝え続けてほしい」と呼びかける。

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