高い球を打ちたいなら「ボールを持ってショートスイング」さあ、やってみよう レッスンの最前線からLIVEルポ

これからお届けするレッスンのやり取りは、感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新技術を使ったいまどきのコーチたちのリアルなレッスンの一部始終を生レポート。人の振り見て我が振り…直せます。

アイアンで球が低く、ダフりも多いのが悩みの前田さん(50代・男性・平均スコア95)

ゴルフ歴7年でベストスコア86の前田雅彦(まえだまさひこ)さん。アイアンの球が低く、球を上げようとダウンブローを意識するも、ラウンドではダフリも出てしまう。

スイング解析でアイアンの球が上がらない原因を探る

バランスライン(右わき、グリップエンド、膝がしら、土踏まず)が直線で結ばれ、安定感のあるアドレスだが…

まずは、後方からのアドレスを確認すると、ツアープロ(写真右)は右腕が左腕に比べてやや体側で肩は飛球線に対し平均「8度オープン」に。これに対し、前田さん(写真左)は右腕がやや前に出て肩も「13度オープン」と左を向きすぎている

ハーフウェイバックではクラブヘッドと手元はラインの中に収まるのが理想的だが、前田さんは手元もヘッドも外にある

ハーフウェイバックでは、プロはバックスイング開始から「腰→肩」の順で動き、肩の回転角度は「42度」に。前田さんは「手→肩→腰」と動きが逆になっていて、肩の回転角度は「30度」と少ない。「アドレスで肩が左に向きすぎることもあり、バックスイングではクラブを肩の向きに沿ってアウトサイドに上げています。体より手の運動量が多いため、肩の回転量が少なくなります」と今回担当する石井直樹(いしいなおき)コーチは指摘する。

正面からの映像で悩みの原因が明らかに

左重心の構えが悪い訳ではないが、頭の位置はボールより右にあるのが理想的

続いて、アドレスを正面から見るとボールは正しい位置に。だが本来ボールより右(ターゲットに対して後方)にあるべき頭がボールの真上に。そのため、左重心の構えになっている。プロはボールより頭の位置は右にあり重心位置も中央にある。「前田さんは、ダウンブローに打とうとする意識が強く、全体的に左重心になっています」(石井コーチ)。

トップで頭の位置が右に動くことは問題ないが、大きく動きすぎると戻すのが難しく打点のズレに

トップの位置を確認するとプロは腰が0.3Tインチ(約8ミリ)目標方向(トゥワード)に動くのに対して前田さんは、1.0Aインチ(約25ミリ)目標と反対方向(アウェー)に動く右へのスウェーが見られる。腰の右への移動とともに、頭の位置も1.8Aインチ(約45ミリ)目標と反対方向(アウェー)と大きく動く

アイアンで頭を右に残しすぎるとクラブの最下点が右にズレ、ダフリやトップの原因に

インパクトの動きを見ていくと、プロは腰の位置がアドレス時に比べて3.1Tインチ(約79ミリ)目標方向(トゥワード)に動きしっかり左足に体重を乗せている。前田さんも2.0Tインチ(約50ミリ)と移動は少ないが、左に体重を乗せている。

ただし、「前田さんはアドレスで左にあった頭の位置が右に大きく移動し、インパクトでは右に残りすぎているため、クラブの最下点の位置が右にズレます。手で合わせに行くと『ダフる』、クラブが届かず手が浮くと『トップ』になります。修正ポイントは、アドレスで頭の位置を少し右にして重心を中央にする。それによってバックスイングで右へ頭が動く量が減り、最下点のズレも減ります。さらに、バックスイングで『手→肩→腰』という動きを『腰→肩』の順に変更しましょう。体とクラブを同調させることで打点のバラつきが減り、球も自然と上がります」と石井直樹コーチは改善点を提示した。

ボールドリルで体とクラブの同調を意識

ショートスイングの動きを繰り返すことで、体と手が同調した動きをイメージしやすくなる

体を使ったバックスイングを習得するため、石井コーチが提案したのは「ボールを両手で持つ」ドリルだ。ボールを両手で持ち、あとはいつも通りスイングするだけ。ただし、バックスイングでは左腕が下、右腕が上。フォローでは左腕が上、右腕が下になるようにし、両腕・両肩でできる形をキープすること。「ポイントとしては『腰→肩』の順で動かし、『9時から3時』の左右対称のショートスイングを繰り返すことです」(石井コーチ)。さらにアドレスの修正ポイントについては、「これまでは左8:右2の割合で左に多く重心をかけたアドレスなっていて、頭の位置もボールの中央からやや左よりになっていました。重心の割合を左5:右5にするだけで頭の位置は右へずれます」と石井コーチは付け加える。

アドレス時点で頭の位置をボールの右にすることで、トップで頭が右に大きく移動する動きを抑えることができる

アドレスでは重心の割合を左5:右5へ変更することで、頭の位置も少しではあるが右へと変化した。

ドリル後は肩の回転量が増えたことで、手やクラブがライン付近を通る動きに変化した

ボールドリル後のハーフウェイバッグを確認すると、肩の回転量が「30度」だったのに対し「48度」へと変化した。体を使ったバックスイングになり、クラブの軌道もラインの外に上がっていたものが、両肩・両腕が同調する形でクラブが上がっている。これにより切り返しでインサイドからクラブを下ろす準備ができた。

「メインエンジン」を使う

体とクラブを同調させ、回転を使ってバックスイングすることが重要と石井コーチは語る

「アイアンで球が低くトップ気味にインパクトしている人は、アドレスを見直してみてください。重心の割合と頭の位置を確認することでミスが軽減されることもあります。また、アマチュアの多くはバックスイングで手の運動量が多く、体と同調したスイングができていない場合があります。実際、腕の動きが『9時から3時』のスイングでも100ydぐらいは飛ばすことができます。そのためには腕ではなく体の回転という『メインエンジン』を使う必要が出てくる。体の回転で振ることに慣れてきたら、メインエンジンの“出力”を上げてスピードを出していきましょう」(石井コーチ)と前田さんの進むべき道が見えた。

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン