荒れた農道、「環境土木」の技術使い修復 神奈川県大磯町・穴虫地区

環境土木による施工。焼け杭の内側にわらと目の粗い石を敷き詰める=大磯町西小磯

 人の手が入らなくなり、荒れた大磯町の農道を伝統的な土木技術で修復しようと、地元の市民活動団体が立ち上がった。損壊箇所の土中環境を中心に自然の循環システムの修復を図る「環境土木」の技術集団が指導、町役場も参加し、新しい時代の取り組みに挑戦した。

 修復に取りかかったのは同町西小磯・穴虫地区にある農道で幅2メートル、長さ100メートルほどの未舗装部分。水が集まってくる谷部にあり、雨のたびに水が川のように流れ、その後もしばらくぬかるみが続いて車も通行できなかったという。

 通常、こうした箇所には砕石を敷き詰める工事で対応する。だが、この方法では次の大雨で細かい石が流されて泥詰まりを起こし、周辺の土壌環境も悪化させてしまう。

 そこで、3日から6日にかけて、農道につながる古道を復活させた「大磯古道山道つなげ隊」と「環境土木」を実践するNPO法人「地球守(もり)」(千葉市)のメンバーら25人ほどが修復作業を行った。

 「環境土木」とは何か。各地でこの工法を実践し、今回も技術指導を行った「地球守」の高田宏臣代表理事(53)は「通常の工事は力で押さえ込むが、環境土木は周りにあるものを使って自然に安定するようにつくる」と説明する。

 水を地表に流すのではなく土中へ浸透・涵養(かんよう)させる。そのためには石、落ち葉、わら、竹炭など従来の公共工事では採用されない自然の素材を使い、土中の微生物を育て、木の根部にある菌糸の作用で水や空気の流れをつくる。

 降った雨が表土を流れ、斜面などから水が「出る」のは地面や土が目詰まりを起こしているからであり、土中の水や空気の流れを考えながら作業することが重要という。

 作業では、地形などを見ながら施工するポイントを決め、腐敗せず、微生物を育てるという焼け杭(くい)で道を区切り、わらや目の大きい石でもともとの地面を敷き詰めていった。全国から「環境土木」を学ぶ若者も集まっており、スピーカーにつながったワイヤレスマイクを着けた高田代表理事が、自ら石積みなどをやってみせながら作業のポイントを説明した。

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