世界が注目!北海道で「アドベンチャートラベル」先進地の現状は

今回のテーマは、「アドベンチャートラベル(=AT)」。定義は、「自然とのふれあい」「異文化体験」「アクティビティ」の3つの要素のうち、2つ以上を含む旅行形態のこと。欧米を中心に広がっていて、来月北海道で、アドベンチャートラベルの国際イベントが開かれる。

アドベンチャートラベルの世界の市場規模は70兆円を超えるとも言われている。その特徴は、一人当たりの消費単価が高いことだ。

こうしたアドベンチャートラベルのニーズに応えることで、大きな経済効果を期待できる。各地の取り組みを取材した。

【黒松内 自然体で“都市と田舎の交流”】

後志の黒松内町。国の天然記念物、「北限のブナ林」は、町の「宝」であり、最も重要な観光資源だ。

7月上旬、黒松内を訪れていたのは、ハワイからやって来た、スティーブさん・ディーさんのハナイ夫婦。町内の農家で、野菜の収穫体験をしていた。

2人が初めて黒松内を訪れたのは、2019年。すっかり気に入り、翌年も訪問するつもりだったというが、コロナ禍に。今回3年半ぶりの再訪となった。30分ほど収穫体験をした後は、新鮮な野菜をその場で味わいます。こちらの農家は無農薬で栽培している。ディーさんは「無農薬の野菜はハワイではなかなか手に入らない。新鮮さがよく伝わる味だ」と話す。

野菜や山菜取り、豆腐作りにそば打ち、書道、和太鼓など。黒松内の交流体験メニューは多彩だ。人口2600人の小さな町で、子供から大人まで100人近い町民が協力している。

自然ガイドの明石さんは「ガイドをやらないかと誘われ、自信はなかったが、何十年もバードウォッチングをしたり花を見たりするのが好きだったので、そういう経験をちょっとでも生かせたらなと思ってお手伝いしている」と話す。

観光協会の本間事務局長は「アドベンチャートラベルということを意識せずに“都市と田舎の交流”から地道に始め、体験交流型のツーリズムを醸成させていった。これが“アドベンチャートラベル”にそのまま使えるようになった」と話す。

体験交流に協力する町民は、年に2回「観光交流ミーティング」を開き、よりよい受け入れに向けた研修を続けている。

黒松内を訪れた外国人観光客の延べ宿泊客数は、10年ほど前まで年間300人ほどだったが、コロナ前は年間700人ほどに増えている。

【“量から質へ” フルオーダーツアー「北海道宝島旅行社」】

主に富裕層の外国人向けに、フルオーダーメードのツアーを提供している、札幌の北海道宝島旅行社。

鈴木社長は、コロナ禍を経て、観光業界は、「量」から「質」への転換が必要と訴える。 「これからは人数を少なめに、いかに付加価値の高い旅行をしてもらうか。名所旧跡を回ったり、おいしいものを食べたりという旅行ではなくて、地元の自然とか歴史とか文化、そしてそこに住む人々の暮らしについて一緒に体験したり、勉強したりしながら回るのがアドベンチャートラベルだ」と話す。

【持続可能な観光地づくり 東川「大雪山自然学校」】

大雪山系の主峰、旭岳。ハイシーズンを迎え、大勢の観光客や登山客で賑わう。

姿見駅でレクチャーをするのは、東川町のNPO法人「大雪山自然学校」のスタッフで、旭岳自然保護監視員を務める社本さん。大雪山自然学校は、「自然で遊ぶ・自然に学ぶ」をテーマに、ネイチャーガイドツアーや子供向けの自然体験プログラムなどに取り組んでいる。

同時に、東川町大雪山国立公園保護協会の委託を受けて、公園管理の一部を担う。3分レクチャーは、この活動の一環だ。内容は「ごみは持ち帰る」「植物を踏まない」「野生動物にエサをあげない」など、当たり前の注意事項だが、「大勢」の人に
同時に聞いてもらうことに意味があるという。

禁止事項はしっかり伝えるが、強制するのではなく、利用者が自然と環境に配慮した行動がとれるように「誘導」する仕掛けだ。「姿見の池」の周辺を巡る、約1.7キロのコース。散策路と高山植物の群落を隔てるロープの張り方にも工夫が。低すぎるとまたがれ、高すぎるとくぐられてしまう。膝よりも少し高い位置にしている。

姿見の池周辺は、6月上旬から8月中旬にかけて、さまざまな高山植物が咲き誇る。こうした高山植物の群落を守ること、そして、訪れた人たちが気持ちよく楽しめること。この二つを両立することが、持続可能な観光地づくりにつながっている。

国際的なイベントが北海道で開かれることで、アドベンチャートラベルに対する理解や受け入れ態勢、さらに自然を大切にする心が広がっていくことに期待したい。
(2023年8月12日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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