【LRT特集】今週末開業!待ちわびる地元の期待と課題は…

 1993年、宇都宮市で次世代型路面電車の導入の検討が始まり、初めて「LRT」の文字が出てきてから今年(2023年)でちょうど30年。LRTの沿線となる周辺の風景は変わっていきました。

 ゆいの杜地区は人口が増え続け、新しい小学校が開校し児童の数が市内で一番多いマンモス校になりました。児童の数は今後さらに増えると予想されています。(開校時約690人・今年度は845人・2025年に1000人超か)

 LRTが通る清原地区。開業を1か月後に控えたこの日。この地区の11の団体で構成される協力会が集まって開業を祝う記念の事業について話し合う1回目の会合が開かれました。時間がない。課題は多い。会議特有の丁々発止はご愛敬。開業を心待ちにする地元の気持ちが伝わってきます。清原地域振興協議会、LRT特別委員会の委員長を務めた石川裕夫さんです。御年84歳。「ようやくこの日が来た」という表情を隠せません。

 LRTとほかの交通との乗りかえが便利かどうか。清原地区市民センター前の停留場にはトランジットセンターが整備されました。LRTは地域活性化にどう結びつくか。

 清原地区で果樹園を経営して37年の山口幸夫さん。活性化へ様々な取り組みを主導しています。妻の美輝さんが中心となり地域の人と立ち上げた「ZUTTOきよはら」というブランドは地元の農産物を使った加工品の販売など地域を盛り上げる活動として10年近く続けてきました。ブランドの立ち上げは「あらゆる可能性を広げるため」と話します。山口さんの果樹園はLRTから比較的離れた場所にあります。LRTの効果を地域全体にどう広げていくか。山口さんはグリーンツーリズム、マルシェの開催など人々を「回遊」させる取り組みを地域全体で考えるべきだと話しています。

 事業費684億円。8年で累積損失の解消を見込むLRT。

 導入するそもそものきっかけは清原地区の交通渋滞の解消です。宇都宮市が2014年に行った沿線の企業で働く人を対象にしたアンケートでは、車を使う通勤者の少なくとも1割がLRTを利用すると回答しています。しかし実際にLRT通勤に切り替えるかどうかは、宇都宮市の担当者も「何とも言えない。走り始めてから利便性を知って分かってくれる人も出てくる」と予測をつかみ切れずにいます。少子化、さらにコロナによる人々の行動様式の変化も見逃せません。今年3月に国に認定された実施計画でLRTの1日の利用者の予測は1万6318人。このうち通勤者の数は1万3357人。この数字も2014年から変わっていません。検討が始まって30年。導入に反対の声や開業時期の延期、さらに試運転中の脱線事故も…

 多くの課題を乗り越えてようやく走り出すLRT。

 今後の街づくりのあり方も含め全国が注目しています。

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