処理水の海洋放出はじまる 栃木県内からは理解示しつつ政府に説明求める声あがる

 東京電力は24日午後1時3分、福島第1原子力発電所の敷地にたまる処理水の海洋放出を始めました。

 海水で薄めた処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度は、放出基準の1リットル当たり1500ベクレルを大きく下回る最大63ベクレルに収まったということです。

 福島第1原発の処理水は約134万トンたまっていて、敷地内のタンク約1000基に保管されていますが、容量はすでに98%ほどに達しているということです。今年度(2023年度)は、このうち約3万1200トンを4回に分け、7800トンずつ放出する計画で1回目の放出には17日ほどかかるということです。処理水は日々増えているため、年度内に削減できる量は約1万1200トン、タンクで10基分ほどにとどまると見込んでいます。

 廃炉と福島の復興のために先送りできない課題として、海洋放出の方針を決めてから2年あまり。政府は放出計画が「国際的な安全基準に合致する」としたIAEA=国際原子力機関の包括報告書などを基に、安全性を訴えてきましたが、風評被害を懸念する漁業者の反対を押し切った形です。

 県内で水産物を取り扱う宇都宮市中央卸売市場の水産卸売業者、宮市宇都宮魚市場は、処理水の放出に理解を示しつつも消費者の買い控えにつながらないよう政府に対し処理水の安全性について丁寧な説明や漁業関係者への手厚い支援を求めました。宮市宇都宮魚市場ではカツオやアジ、ヒラメなど取り扱う全体の3割から4割を福島、宮城、茨城県産で占めていて取り引きは継続しながら客にも安全性を伝えたいとしています。

 処理水の海洋放出は第1原発の廃炉が完了するまで約30年続く計画で、岸田総理は風評被害対策について「数十年の長期にわたろうとも政府として責任を持って取り組む」と強調しています。

 また、政府は放出に反発している中国に「科学的観点からの意思疎通」を呼びかける方針ですが、中国は海洋放出が始まったことを受けて24日から日本の水産物の輸入を全面的に停止すると発表しました。

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