小田原市長のポスター、「違法」の指摘 市選管は対応せず 市長側は不備認め一斉に撤去

解散して存在しない政党支部の掲示板に違法に掲示されていた守屋輝彦市長の政治活動用ポスター(2023年8月下旬撮影)

 すでに解散して存在しない自民党支部の掲示板などに小田原市の守屋輝彦市長の政治活動用ポスターが貼られ、公職選挙法違反に当たるとの指摘を受けていたことが30日、分かった。3年以上、違法状態で掲示されており、市民が過去に市選挙管理委員会に通報していたが、市選管は対応していなかった。守屋氏側は「表示内容に不備があった」と認め、市内各所のポスターを一斉に撤去した。

 守屋氏の写真と名前が表示されたポスターは「自民党小田原市第三支部」の掲示板に貼られていたが、守屋氏を代表とする第三支部は守屋氏が小田原市長に初当選した2020年5月に解散している。一部は政党支部の記載もない無地のボードに貼られ、市役所や小田原署の周辺にも複数掲出されていた。

 公職選挙法では政党活動用を除き、個人の政治活動用ポスターを掲示板などのボードに貼ることを禁じており、違反した場合は罰則(2年以下の禁錮または50万円以下の罰金)が定められている。

 また、ポスターには掲示責任者と印刷者の氏名を記さなければいけないが、守屋氏のポスターに印刷者の記載はなく、掲示責任者も守屋てるひこ事務所としていた。市選管は「本来は氏名を記載すべきで、存在しない政党支部の掲示板を使用することも不適切。そもそもポスターの裏打ち自体が公選法に抵触する恐れがある」と説明する。

 市内在住の男性が24日にポスターの法令違反を指摘する陳情を市議会に提出し発覚。守屋氏側はその4日後から市内全域でポスターの撤去を始めた。陳情は9月の市議会で審議される見通しで、男性は「法令違反がまかり通っている。政党支部の掲示板は撤去されず、再び利用する可能性もある。陳情を取り下げるつもりはない」と話している。

 男性によると、今年初めごろ市選管にポスターの違反を指摘。市選管は事務所にポスター撤去を命じる法的権限もあるが、対応していなかった。市選管の担当者は「ポスターを確認し、確かにもやもやとするものがあったが気が付けば時間がたっていた。市長への忖度(そんたく)から隠したわけではない」などと説明した。

 神奈川新聞社は守屋氏の事務所と市秘書室に取材を求めたが、どちらも回答を拒否。守屋氏は30日付で公式ホームページを更新し、ポスター撤去について「この度(たび)の指摘を真摯(しんし)に受け止め、今後は、専門家も交えて、法の解釈を的確に行ってまいります」と記した。

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