原爆資料館リニューアルアンケート〈上〉「物言わぬ」展示物に力

 長崎市が被爆80年の2025年度に予定する長崎原爆資料館(平野町)のリニューアルについて、長崎新聞社は双方向型報道窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)でアンケートを実施。「物言わぬ」展示物に迫力を感じたといった感想や、被爆の実相の伝え方、展示内容への注文・提案など、さまざまな意見が寄せられた。2回に分けて紹介する。
 アンケートは8月6~13日に行い、▽見学のきっかけ▽見学回数▽印象に残っている展示物▽リニューアルを知っているか-などを選択方式と自由記述方式で質問。ナガポス登録者のほか、原爆資料館周辺でもアンケートへの協力を呼びかけ、県内外から10~70代の計91人が回答した。
 「見学して何が印象に残っているか」(選択式、複数回答)の設問では、▽被爆者の写真(回答数66)が最多、▽原爆で亡くなった人の遺品(同58)▽被爆遺物(同57)▽被爆した建物や街並みなどの写真(同50)-が続いた。
 大村市の50代公務員女性は「溶けたガラス瓶や止まったままの柱時計は、物言わぬものこそ、力がある気がした」。県外の70代無職男性は「戦争と原爆がもたらす悲惨さ、非道さ、悪質さを示す圧倒的な迫力があった」とし、国内外を問わず、多くの人に見て、考えてほしいと訴えた。
 「核兵器に関する説明資料」を選択した佐世保市の自営業男性(50)は「世界の核情勢はかなり変化している。ウクライナのことを踏まえ、未来を見据えて展示すべき。(核兵器禁止条約締約国会議への)オブザーバー参加さえしない日本政府の消極的姿勢も展示に加えるべき」と指摘する。
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 原爆資料館のリニューアルを巡っては、専門家による議論が7月に始まった。ただ、「リニューアルを知っているか」の設問に対し、「知っている」と答えたのは約3割にとどまった。
 展示内容を「変える必要はない」との意見が一定数寄せられた一方、「幼い子どもたちに恐怖感を与えるだけにならないように」(佐世保・40代パート女性)、「きれい事ではなくリアルを」(長崎・50代パート女性)と実相の伝え方の難しさも浮き彫りに。日本の加害の歴史に目を向ける必要性を強調する声も寄せられた。
 長崎市の70代主婦は「なぜ戦争になったのかが分かるような展示にしてほしい。原爆の恐ろしさを理解した子どもたちは、必ず『どうして戦争をしたの?』と思うはず」と記した。(熊本陽平)

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