原爆資料館リニューアルアンケート〈下〉 「共感」「教訓」「対話」を

 こんな長崎原爆資料館になってほしい-。2025年度の展示リニューアルに向け、長崎新聞社が双方向型報道窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)を通じて実施したアンケートには数々の提案も寄せられた。「共感」「選択」「教訓」「対話」…。多様なキーワードが浮かび上がる。

■ 日常生活知る
 「残念ながら人は実際に体験しない限り、他人事的な感覚を拭えない」とつづった長崎市のパート女性(53)。そのため来館者が自らの日常に引きつけて原爆を考えるような、展示の工夫が必要と説く。「物質的被害だけでなく原爆投下前の日常生活をもっと伝わりやすくすると、共感が生まれるのでは」。県外の女子学生(20)も「人に焦点を当てた展示を。例えば被爆した少女の弁当箱だけでなく、その少女の戦争中の生活を知りたい」と望む。

■ 見るかを選択
 原爆の惨禍の伝え方については意見が割れた。当時を知る人に「においが忘れられない」と聞いたことがある同市の50代自営業男性は、最新技術を活用し「来館者に当時のにおいや風向きを映像と併せて体感してもらい、自分事と考えてもらう」とリアルさを追求。一方で「仕事で関わる子どもたちが過度な精神的ショックを受けていた」(南島原・50代自営業女性)との声も。来館者が凄惨(せいさん)な内容の展示を見るのか、それとも避けるのかを、あらかじめ「選べるようにする」との提案が複数あった。

■ 歴史を丁寧に
 「(米軍の)原爆投下は歴史の積み重ねの結果。もっと丁寧に伝えて」(長崎・70代団体職員女性)
 「現在の展示では唐突に原爆が落とされたような印象を受ける」(県外・20代女子学生)
 原爆投下に至る戦争の経過や国際情勢について、展示の質、量ともに不十分との指摘が目立つ。女子学生は「日本がどのように戦争に突入し、そこに市民がどう参加していたのか示すことで、二度と原爆を落とさせないための教訓が得られる」と考える。
 県外の70代男性は、日本は受けた「被害」だけを強調する傾向があるとして、日本による過去のアジア侵略などの「加害」にも目を向けるべきだと指摘。「戦争がもたらす被害と加害の実相のコーナー」を設け、「何があっても戦争はしてはいけないとの訴求力を強めて」と訴えた。

■ 考え知りたい
 展示に限らない提案も。複数の20代学生は資料館を見学した後、他の来館者や地元住民、研究者らと「対話」できる空間をつくるよう求めた。見学後に「みんなが何を考え、感じたか知りたい」と思ったという。他にも館内でのワークショップやコンサートなどを通じ、「平和」や「未来」を考える機会を提供してほしいとの意見も挙がった。(三代直矢)

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