変化する投手の起用法 200勝投手は「絶滅危惧種」となる可能性も

日本時間9月19日、メジャー史上122人目の200勝投手が誕生した。地区首位のブリュワーズを相手に7回無失点の好投を見せた42歳の大ベテラン、アダム・ウェインライト(カージナルス)だ。11先発連続白星なしという時期もあり、マイルストーン到達が危ぶまれたウェインライトだが、直近2試合でいずれも勝利投手となり、無事に大台に到達。時代とともに投手の起用法が変化していくなか、ひょっとしたらウェインライトは「最後の200勝投手」となるかもしれない。

現役の200勝投手はウェインライトが5人目。ジャスティン・バーランダー(255勝)、ザック・グレインキー(224勝)、マックス・シャーザー(214勝)、クレイトン・カーショウ(209勝)という偉大な4投手に次ぐ快挙となった。200勝未満の現役投手の顔ぶれを眺めてみると、最もマイルストーン到達の可能性が高そうなのはゲリット・コール(ヤンキース)だろう。現在33歳で通算143勝。年平均13勝ならあと4年半で200勝に届く計算になる。もしコールが大台に届かなければ、もう2度と200勝投手が現れることはないかもしれない。

その理由として、まずは先発投手が長いイニングを投げるケースが減っていることが挙げられる。「試合が進むにつれて打者は先発投手より有利になる」という事実が広く知られるようになり、近年は球数が90球や100球に達していなくても、相手打線が3まわり目に入ったところで先発投手を交代させるという戦術が浸透してきた。場合によっては、無失点の先発投手を5イニング未満で降板させるケースもある。相手打線が慣れてきた先発投手や疲労がたまっている先発投手を無理に続投させるより、新たなリリーフ投手を投げさせたほうが打たれる可能性が低いというわけだ。先発投手が投げるイニングが減少すれば、おのずと先発投手が白星を得るチャンスも減少する。

また、「勝利数は投手の価値に直結しない」という価値観が広まったことも大きい。ナ・リーグでは2021年に11勝のコービン・バーンズ(ブリュワーズ)、2022年に14勝のサンディ・アルカンタラ(マーリンズ)がサイ・ヤング賞を受賞。昨季メジャー最多の21勝を挙げたカイル・ライト(ブレーブス)はサイ・ヤング賞投票10位にとどまった。勝利数というスタッツを重視しない時代の流れのなかで、通算200勝というマイルストーンを追い求める投手は減少していくかもしれない。

さらに、中4日でローテを守り、年間30試合以上に先発して、それを毎年コンスタントに続けるという先発投手はほぼ絶滅している。トミー・ジョン手術などで長期離脱する投手が増えていることに加えて、若いころには球団からイニング制限が課せられ、連戦が続くときには一時的に6人ローテが採用されるなど、球界全体として先発投手の投球イニングを抑える方向に動いている。投手たちのキャリア全体のことを考えれば、これらは決して悪いことではないが、先発投手がコンスタントに白星を積み重ねることが難しくなっているのは一目瞭然だろう。

今後、200勝投手が「絶滅危惧種」となっていくことは間違いない。「最後の200勝投手」はウェインライトだろうか、コールだろうか、それともまた別の投手だろうか。

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