「ヤマハ」「ダンロップ」が50年事業から撤退 子会社の売却も高水準

ガスのゴム管(写真はイメージです)

ダンロップブランドのタイヤを生産する住友ゴム工業<5110>や、2輪車(バイク)を生産するヤマハ発動機<7272>などが、50年以上続けてきた事業から撤退する。

住友ゴム工業は2025年3月末までにガス管の事業から撤退する。ガス管市場が縮小傾向にあることから、成長事業に経営資源を集中させるのが狙いだ。

ヤマハ発動機も2024年3月末までに、プール事業から撤退する。同社は2025年モデルの販売を最後にスノーモビル事業からの撤退も決めている。

このほかにもアサヒグループホールディングス<2502>が酒類事業に経営資源を集中させるために外食事業から撤退することが報じられるなど、撤退の話題は少なくない。

M&A OnlineのM&Aデータベースで調べたところ、事業撤退につながる上場企業による子会社の売却件数が、2023年1-9月は219件に達し、前年同期(181件)よりも38件増えた。

企業の中でコロナ禍後の事業構築の見直しが進んでいることが想像できる。当面は撤退や子会社売却などの動きが続きそうだ。

成長事業に経営資源を集中

住友ゴムが製造を取りやめるのは、LPG用ゴム管や都市ガス用強化ガスホースなどで、50年前からこうした製品を造ってきたが、オール電化住宅の普及や、ガス暖房機器の減少などを踏まえ、家庭用ガス管事業からの撤退を決めた。

同社は中期経営計画で2025年までを「既存事業の選択と集中」の期間と位置付けており、この方針に沿って低収益事業から撤退し、成長事業を強化することにした。

ヤマハが製造を取りやめるのは、繊維強化プラスチック(FRP)製のプールで、これまでに学校、レジャー、フィットネス、家庭、医療など向けに販売してきた。

またスノーモビルは二輪車事業で培った小型エンジン技術を応用したもので、これまで55年に渡って、スポーツやレジャー、業務用として、日本や欧米で販売してきた。日本は2022年モデル(在庫販売)、欧州は2024年モデル、北米は2025年モデルで販売を終了する。

同社も中期経営計画で、経営資源の見直しを進めており、成長事業などに経営資源を集中させるため、両事業の撤退を決めた。

両社ともに業績への影響は軽微としており、住友ゴムは2023年12月期第2四半期決算時に業績予想を上方修正し、通期の売上高を100億円多い、1兆1700億円(前年度比6.5 %増)に、営業利益を65億円多い410億円(同2.27倍)に引き上げた。

ヤマハも2023年12月期第2四半期決算時に業績予想を上方修正し、通期の売上高を500億円多い2兆5000億円(前年度比11.2%増)に、営業利益を200億円多い2500億円(同11.2%増)に引き上げた。

進むコロナ禍後の事業構築の見直し

上場企業による子会社売却の件数は、2019年(1-9月)は142件だったが、コロナ禍の影響のあった2020年(同)は210件、2021年(同)は224件と200件を超えていた。2022年(同)は181件とやや減少したが、コロナ禍からの回復が鮮明になった今年は、再び増加に転じている。

この数字からは、コロナ禍後の事業構築について、見直しが進んでいることがうかがわれる。

文:M&A Online

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