【MLB】「下剋上」対決の行方は?DバックスVSフィリーズ リーグチャンピオンシッププレビュー

プレーオフ最多タイの4本塁打を放っているフィリーズのカステヤノス

ともに100勝チームをなぎ倒してディビジョンシリーズを突破してきたフィリーズとDバックス。大差での優勝を果たした同地区のチームに勝って勝ち上がったという意味では共通点があるものの、現在のチーム状況を見るとお互いの立ち位置は大きく異なる。

ブライス・ハーパーを筆頭に円熟味を増した主力選手を多く揃えたフィリーズがチームとして最盛期を迎えているのに対し、Dバックスはコービン・キャロルやガブリエル・モレノといった若きスター候補がチームを引っ張るこれからのチームだ。ともに下剋上を成し遂げたチームとはいえ、このシリーズに臨む上での心境は大きく異なることが予想される。

そんな似て非なる両者の7ゲームシリーズはどのような展開になるだろうか。日本時間10月17日から始まるリーグチャンピオンシップシリーズを前に、両者のチーム状況やここまでのプレーオフを振り返りながらシリーズの行方を展望してみよう。

まずは2年連続のリーグチャンピオンシップシリーズ進出のフィリーズだ。もし今季も勝ち抜けば、2年連続のリーグ優勝、そしてワールドシリーズ挑戦となる。昨季は王者・アストロズに押し切られ敗れたものの、今季は投手力・守備力を強化して舞い戻ってきた。

チームも、ファンも今季こそは頂点を、という思いは強いだろう。2年連続のワールドシリーズ進出に向け、リーグ屈指の熱狂的なファンベースが凄まじい盛り上がりを見せることは想像に難くない。

一方、Dバックスは2007年以来のリーグチャンピオンシップシリーズ登場となる。近年はチームを解体しての再建が続いており、シーズン勝ち越しを決めたのも2019年以来だったため下馬評は芳しくなかったが、プレーオフに入ってからは一変。ブリュワーズ、ドジャースと二地区の優勝チームを完封し、無傷の5連勝でここまで駆け上がってきた。

ワイルドカード決定、そしてディビジョンシリーズ勝利後は選手が本拠地・チェイス・フィールドのスタンドにあるプールに飛び込むパフォーマンスがおなじみとなっているDバックス。ここまでの勢いのままフィリーズをも飲み込み、三度目のプールダイブを目指す。

では、ここまでの戦いぶりを見ていこう。Dバックスが5連勝、フィリーズが5勝1敗と、ともに相手を圧倒して勝ち上がってきただけあり投打ともに素晴らしい成績を残している。

まずは打撃だ。フィリーズはブレーブスとのディビジョンシリーズでニック・カステヤノスが2試合連続マルチホームランを放つ大活躍を見せるなど一発攻勢で相手をノックアウト。プレーオフでの本塁打数は13本で、プレーオフ出場チームトップタイだ。カステヤノス以外にも26打席で2本塁打、打率5割を誇るトレイ・ターナーやマーリンズ戦でグランドスラムを放ったブライソン・ストットなど多くの打者が好調を維持しており、上位から下位まで隙のない打線となっている。息を抜く場面のない打線は相手投手にとって脅威になるはずだ。

だが、そのフィリーズを試合当たりの本塁打数で見れば上回るのがDバックスだ。今シーズン通算では166本塁打で30球団中22位と、むしろ本塁打の少ないチームだったことを考えれば驚くべきことだ。シーズン7本塁打だったモレノがすでに3本塁打、シーズン9本塁打だったアレック・トーマスが2本塁打を記録。若手野手の想定外のがんばりがコービン・バーンズ(ブリュワーズ)、クレイトン・カーショウ(ドジャース)ら各チームのエースを打ち崩すのに役立ったのは言うまでもない。

投手陣に目を移すと、こちらもプレーオフだけを見れば共に甲乙つけがたい成績を残している。プレーオフのチーム防御率はフィリーズが1.53、Dバックスが2.20で、それぞれ出場チーム中1位、2位だ。サンプルサイズの小ささを考えればこの程度の差は正直あってないようなもの。今季30球団中トップクラスの貢献を残してきたフィリーズ投手陣はもちろん、シーズン中にはやや不安もあったDバックス投手陣もここまでは素晴らしい頑張りを見せている。

とはいえ、もし両者に差がつくことがあるとすればやはり投手になるだろう。というのも、リーグチャンピオンシップシリーズは7試合。これまでに比べればやや長いスパンでの戦いになるからだ。当然、必要となる投手の枚数は増えてくる。

ザック・ウィーラー、アーロン・ノラの二本柱に加えレンジャー・スアレス、タイワン・ウォーカー、マイケル・ロレンゼンといった経験豊かな先発投手を多く備えるフィリーズに対し、Dバックスはザック・ギャレン、メリル・ケリー以降の名前がなかなか出てこない。ブランドン・ファートがドジャースとの3戦目ではまずまずの投球を見せたとはいえ、見劣りは否めないところだ。ただでさえ打撃好調の両チームだけに、投手陣がほころびを見せた側が押し切られる展開になる可能性は低くないだろう。

そんな中、Dバックスが主張できる部分があるとすれば野手の守備力だろう。Dバックスはスタットキャストを使用した守備指標・OAAで30球団中2位の31を記録した堅守のチーム。このポストシーズンでも三塁のエバン・ロンゴリアや左翼のルルデス・グリエルJr.らが好守を見せ投手を救ってきた。やや劣る投手力を守備がカバーすれば、守りの面では互角に戦える可能性も出てくるはずだ。

いずれにせよ、ともに強敵を下し絶好調の状態で臨むリーグチャンピオンシップシリーズは激しい戦いになること間違いなし。1試合目から目が離せない展開になりそうだ。

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