沖縄の街から書店がどんどん消えています。8月31日に沖縄市の山内店、9月30日には那覇市の壺川店など県内での閉店が相次いでいる「TSUTAYA」のほか、昨年11月には那覇市大道の「ブックスおおみね」も閉店しました。日本出版インフラセンターのデータなどによると、県内の書店数は現在91店で、10年前(2013年6月)の121店から30店減りました。また、沖縄は41市町村のうち過半数の23市町村に書店がありません。県内外の書店事情に詳しいジュンク堂書店那覇店エグゼクティブ・プロデューサーの森本浩平さんに、書店が減っている理由などについて聞きました。(学芸部・又吉嘉例)
全国でもこの10年で、書店の数は約3割減少しています。このインフラセンターのデータでは13年3月に1万5621店あった店補登録数が、23年3月には1万1506店まで減りました。背景には国内の人口減少に加え、インターネットやスマホが行き渡り、人々の空いた時間の楽しみ方が多様化したことがあるとみられています。
出版科学研究所(東京)によると、雑誌や書籍など出版物の売り上げは1996年の2兆6564億円をピークに下り坂となり、2022年には1兆1292億円と過去最低になりました。特に雑誌市場は少子高齢化やネットの普及を理由に、雑誌を必要とする人が激減。休刊も相次ぎ、全体の売り上げの低下が止まらないといいます。
「かつては週刊少年ジャンプと週刊少年マガジンが書店に行くきっかけになっていた」。ジュンク堂書店那覇店の森本さんはそう指摘します。1995年ごろ、ジャンプは600万、マガジンは400万を超える部数を発行していました。計1千万部以上。「今ほどコンビニも多くない時代、ざっくり1千万人が毎週、書店にジャンプとマガジンを買いに行っていた計算です」
実家が小規模な「街の本屋さん」だったという森本さん。その商売を手伝っていた25年前までは「ジャンプとマガジンの発売日に合わせて書籍や文庫本を移動させて、フェアのような棚を作っていた」。客が増えるので、本を売るチャンスだったのです。「書店は本を出版社などから預かって販売(委託販売)しているので、売れ残っても返品できる。当時は黙っていてもお客さんが来るようないい商売で、街にも書店があふれていた」と振り返ります。
しかし、そこから約20年で、コンビニの店舗数は右肩上がりに増えました。また、ネットに「いつでも・どこでも・誰でも」アクセスできる環境も整いました。「ネットから飲食やファッションの情報が取れるので、雑誌が衰えていった。月刊誌や週刊誌が売れなくなる一方で、お客はコンビニに流れていく」と書店にとって厳しい環境の変化を説明します。「それまでは読書に充てていた時間を動画やゲームなど、スマホに費やすようになったことも大きい」
「書店離れ」への危機感を持った沖縄の書店側も客を呼び戻そうと、さまざまな仕掛けを打っています。ジュンク堂書店那覇店では毎週、子ども向けの読み聞かせ会や新刊本の著者を招いたトークショーなどを開催。年間150以上のイベントを実施しているそうです。県内の複数の書店や出版社は、協力して読書人口を増やそうと毎年、書店員が一番読んでほしい本を決める「沖縄書店大賞」と、その年読みたいイチオシの県産本を選ぶ賞「この沖縄本がスゴい!」をそれぞれ選出しています。書店と合わせてカフェやホビーショップを営業することで収入を確保している店舗もあります。
森本さんは「ネットにはネットの便利さがあるが、本は形がある『物』。めくって読むことで記憶に残る効果があったり、コレクションできたりと、『物』としての価値があります」と力を込めます。さらに書店の良さについて「目的以外のジャンルの本に出合え、自分の『好き』や趣味が広がる場です。旬の本が並ぶ本棚からは、世の中の動きも見えてきます。街の本屋さんに行きましょう!」と呼びかけました。