「できることを丁寧に」 大けが乗り越え九谷ぬり絵大賞 沖縄・北谷町出身のアーティスト

塗り絵のお題になった「九谷焼」の写真を持つ村松芽さんと、グランプリに選ばれた作品=12月18日、県内

 【北谷】沖縄県内各地で絵を教えて10年以上になる北谷町出身のアーティスト村松芽(めぐみ)さんは、背骨など5カ所を折る大けがで数カ月間寝たきりになった時期がある。当時、絵画教室の子どもたちがずっと待ってくれていた。「私は昔からみんなより不器用。できることを丁寧にやっていこう」と、手をゆっくり握るリハビリから始めて約2年半後。石川県能美市などが主催する「第8回九谷(くたに)ぬり絵コンテスト」に応募し、昨年12月9日に国内外の1478点の中からグランプリを射止めた。(中部報道部・平島夏実)

 同コンテストは伝統工芸の九谷焼の絵柄に、好きな画材で色を塗るもの。お題は九谷庄三(しょうざ)作の「色絵山水亀図 馬盥形(うまだらいがた)水盤」で、3匹の亀が泳ぎ回るモチーフだった。

 九谷焼は夫の一樹さんとたびたび訪れる静岡県の骨董(こっとう)品店で好きになった。昨年春には、うるま市の保育園児と共に海の世界をテーマに縦3.5メートル、横6メートルのアート作品に取り組み、ウミガメを描いた。絵画教室でも、みんなで亀を描いた。亀になりきって床でスイスイ水をかく子どもたちが懐かしかった。

 「賞はいくつもの幸運が重なって頂けるもの。点と点がつながって今がある」と振り返る。

 入院当時は、皿の上で食材を並べ替えて絵にした。朝ご飯のバナナは昆虫に。ミニトマトの中身は、ミステリアスな猫の目に。キュウリの細切りはヒゲに。「食欲が湧かなくても、それで満たされてました。手が握れなくても歩けなくても、私には『イメージする力』が残っているなって幸せな気持ちになれた」 

 グランプリを取った今回の作品も、絵の中に「ダイブ」しながら描いた。亀と一緒に何度も泳いでみて、引っかかる部分に色を差していったという。

 村松さんらの入賞作品は14日まで、石川県のKAM能美市九谷焼美術館で展示している。(能登半島地震の影響で8日から開館)

村松芽さんが入院中にバナナで作った作品(提供)

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