高額なツケ、女性客に背負わす 悪質なホストクラブが社会問題化 沖縄でも10代女性に100万円超の請求

 支払い能力を超える高額な売掛金(ツケ)を女性客に背負わせる悪質なホストクラブが全国的に社会問題化している。返済のために女性が売春をしたり性風俗店で働いたりするケースも多く、警察庁は昨年11月に取り締まり強化の通達を出した。沖縄県内のホストクラブでも10代女性が100万円を超える支払いを求められたり、売春に絡んで関係者が逮捕されたりする事例が確認されている。消費者問題に取り組む髙良祐之弁護士は「社会経験が乏しい若年層を狙った手口で、法規制が急務だ」と警鐘を鳴らす。(社会部・比嘉海人、南部報道部・国吉聡志)

 売掛金は、飲食代をその場で支払えない利用者に代わってホストが一時的に立て替え、後でホスト自ら回収する仕組み。「後払いでいいから」などと言って飲食を勧め、返済が滞ると強引な取り立てをしたり、売春で返済を強要したりする手口が問題になっている。

 那覇簡裁に調停が申し立てられた事案では、県内のホストクラブが、飲酒提供が禁じられている10代女性に高額な酒やシャンパンタワーなどを売りつけていた。一度の来店で約92万円を請求し、うち約82万円が売掛金になったこともあった。

 関係者によると、女性が「払えない」と断っても、ホストが「返済はいつでもいいからツケで飲もう」と促し、計約130万円のツケを負わせた。女性の支払いが滞るとホストは「親に話をする」「回収屋と行く」などと脅したという。女性はホスト側に代金の一部を支払うことで和解した。

 このほか県内では昨年1月、売掛金返済のために売春する場所(那覇市内)を20代女性に提供したなどとして、経営者らが売春防止法違反容疑で逮捕・送検されている。同12月には県警と沖縄労働局が同市松山のキャバクラやホストクラブを立ち入り調査した。

 県内の別のホストクラブ従業員は本紙の取材に「回収できないリスクがあるのでなるべく現金やカードで支払ってもらいたいが、全国展開しているグループ店などではホスト同士の競争が激しく、売掛金が高額になりがち。ツケを抱えた女性が夜の仕事をするようになることもある」と話す。

 2022年の成人年齢引き下げで、18、19歳は保護者の同意なしで契約を結べるようになった。それが被害の拡大につながっているとの指摘もある。

 髙良弁護士は「『高額だと理解しているだろう』という批判は、多重債務者に『金利を分かってヤミ金を利用したのだろう』と言うのと同じ。社会経験が少ない20歳前後の女性に多額の借金を背負わせるのは適性な商売と言えるのか」と指摘し、「売掛金制度の禁止や年収を考慮した法規制を進めるべきだ」と訴えた。

売掛金問題の構図
女性が県内のホストクラブを利用したときの伝票。1回の来店で約82万円の売掛金(赤字)を請求されている(関係者提供)

© 株式会社沖縄タイムス社