「大学進学率は50%超え!」も、地域によって大きな差が。【都道府県別の大学進学率】

地域ごとに異なる大学に対する考え方

2023年12月、政府は「子ども3人以上の世帯」を対象に大学の学費を無償化する方針(2025年から開始予定)を発表しました。

また、コメンテーターやFPによる子どもの教育費に関する解説では、「大学の学費」が含まれていることがほとんどです。これらのことから、現代社会では大学進学がメジャーな進路というようにも思えます。

文部科学省によると、高校卒業後に進学する人の割合は全体の80%を超えており、現代では学びを継続するのがメジャーとなっています。とはいえ、大学進学率については令和4年は56.6%でした。

また、大学進学率を地域別に見てみると、国内における大学進学率の平均を一部のエリアが高めており、全体で見るとメジャーな進路とは言いがたいことにも気付きます。

本記事では、地域別の大学進学率を確認した上で、地域によって差が生じる理由などについて考えていきましょう。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

【地域別の大学進学率】日本の大学進学率は約57%だが、地域差が大きい

文部科学省「令和4年度学校基本統計」では都道府県別の大学進学率が明らかにされています。

【図表1】都道府県別の大学進学率

【図表1】によると、大学進学率がもっとも高い都道府県は「東京」。男性は78%、女性は76%となっており、8割近くが大学に進学しています。

また、男性については「山梨」と「京都」の大学進学率が高く、7割を超えています。

女性については「京都」が69%と東京に次ぐ結果です。また、「奈良」「広島」の大学進学率は男女ともに高い傾向にあります。

一方、「岩手」「秋田」「福島」「山口」「佐賀」「鳥取」「大分」「宮崎」「鹿児島」における大学進学率は男女ともに低く、女性については3割台です。この数字を見る限り、大卒は地域において比較的珍しい存在と言えるかもしれません。

また、興味深いことに、東京の大学に自宅から通え、首都圏に所在する中高一貫校に通学範囲内である「埼玉」における女性の大学進学率についても半数に満たない結果となっています。

「千葉」や「神奈川」の女性の大学進学率も他の地方と比べてやや高い程度です。

地方において大学進学の足かせになっているものとは何か

前章では、都道府県別に大学進学率が異なることを確認しました。地方に住む人の大学進学率が低い傾向にある理由とは何なのか。その理由を考察してみましょう。

大学や教育機関の少なさ

大学進学率が低い県は東北や九州に多いです。これらの地域にも国立・公立の他、私立大学も複数あります。しかし選択肢はそう多くはありません。

もし、東京都の早慶やGMARCH、関西エリアの関関同立といった著名な大学への進学を希望するとなれば、アクセスは容易ではありません。交通費が割高な他、実家に帰省するにも時間がかかります。

さらに、東京や関西の有名大学に進学するには大都市圏で暮らす同世代との受験戦争に勝つ必要があります。

大都市にはこれらの大学進学に特化した学習塾が充実している他、希望する大学に在籍している学生に家庭教師を依頼することもできます。推薦枠を持つ高校も多いです。

都会と地方の収入格差

各地域における大学進学率の差は、親の収入も関係します。厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」を参考に都道府県別の賃金を確認してみましょう。

【図表2】都道府県別の賃金

【図表2】は【図表1】(都道府県別の大学進学率)にどことなくかたちが似ているようにも思います。

大学進学率が全国的に見て抜群に高い「東京」は賃金についても国内トップ。また、大学進学率が高い「京都」「大阪」「兵庫」「愛知」についても賃金が高い傾向にあります。

一方、大学進学率が低い「岩手」「佐賀」「鳥取」「大分」「宮崎」「鹿児島」などは賃金も全国的に見て低い傾向にあります。これらの県は最低時給についても、800~900円台と低いです。

また、北陸地方や近畿地方などには大学進学率が極端に低い県がほとんどありませんが、賃金についても著しい特徴があるわけではありません。

育った環境や人間関係

周囲に大学生がおらず、親も大卒でなければ、大学に進学しようという発想にはなかなかなりません。

また、地方には都会のような大卒者が大半を占めるオフィスでの内勤の職業は少ない傾向にあります。

こうしたコミュニティに属していれば、テレビドラマで高層ビルで働く会社員を演じる俳優を見たり、ファッション誌で大学生を見たりしてもどこか遠くの世界の話に感じるでしょう。

また、現代においても一部の地域では女性に四年制大学は必要ないという考え方や、女性が難関大学に進学する価値がないという考え方が根付いています。

親や祖父母がこのような価値観だと、本人は大学に興味があっても、進学を断念してしまうものです。

大学進学が全てではないという考え方もある

首都圏で暮らしていると、「高校卒業→大学進学」という錯覚に陥ります。このことは、東京の7割を超える大学進学率も裏付けるでしょう。しかし全国的に見てみると、大学進学者はむしろマイノリティな存在とも言えます。

地方都市の一部のエリア、もしくは進学校に在籍していると、高校卒業後の進路は大学進学一択かもしれません。そして、大学進学後は長期間にわたる就職活動をして、大卒として就職します。

しかし、地方には二年制の専門学校を出て就職する人も多くいます。美容師や介護士などとして働く場合、大学生のような就活活動をこなす必要がないケースも多々あります。

また、高卒での就職の道も拓かれています。例えば、鳥取労働局は令和6年3月・新卒(高卒)の求人倍率は2.77倍と発表しています。この倍率のみから言うと、就職を希望して採用枠からこぼれることはありません。

まとめにかえて

日本には約800もの大学があります。大学の中には定員割れし、財政難に陥っている大学も少なくありません。こうした状況に対して、日本には大学が多すぎるという意見もあります。

また、大学に何となく進学し、大卒枠で就職活動を行う人も多いです。このようなケースでは資格やスキルがなければ、高校生よりも就職活動に苦戦することも珍しくありません。

また、四年制大学の文学部で何気なく過ごすよりも、介護、看護などの資格を取得できる短期大学や専門学校などに進学した方が安定した生活を営める可能性もあります。

大学に対する認識は各都道府県によって大きく異なります。自分が将来暮らしたいエリアにおける大学に対する考え方をとらえた上で、特性や希望する職業を踏まえて検討することが大切です。

参考資料

  • 文部科学省「参考資料集」
  • 文部科学省「学校基本調査-令和4年度 結果の概要-」
  • 厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
  • 鳥取労働局「令和6年3月新規高等学校卒業予定者の求人・就職希望状況」

© 株式会社ナビゲータープラットフォーム