名護の古墓調査を解説 5地区の墓の分布など明らかに 博物館40周年記念トーク 沖縄県

名護博物館が行った墓調査のギャラリートークに耳を傾ける参加者=7日、名護市の同館

 【名護】名護博物館は7日、開館40周年を記念して開催している企画展「なごはく『もの』がたり」の一環として、同館学芸員の比嘉ひとみさんによる市内墓調査のギャラリートークを行った。比嘉さんは1980~90年代に同館が行った調査について解説し、「博物館は地元の記録を積み上げることが重要だ」と話した。(北部報道部・玉城日向子)

 70~80年代、合併により名護市が誕生し、土地改良事業や農道整備が行われたことで、墓の位置が変更されたり、取り壊されたりした。

 一方、市内には貴重な墓が多数残っていた。市や同館に古墓の調査依頼があったが基本資料が乏しかった。そこで同館は85年から、久志区を皮切りに屋部、屋我地、羽地、名護の各区の順に墓調査を行った。

 調査では、区長や住民から区の概要や墓地の場所などを聞き取り、墓の分布状況や向きを調べて外形の簡略図を記録していった。94年に5地区の調査が終了した。比嘉さんは、調査で計1万143基の墓の分布と形態が明らかになったと説明。墓には堀込墓や堀込屋根付き墓、亀甲墓、破風墓などの種類があったとした。計158人から聞き取りし、5冊の報告書にまとめた。調査により、市内で火葬が始まった経緯も分かったと振り返った。

 比嘉さんは「当時、すぐに成果が出るわけではない記録調査に予算を付けた市や企画した博物館の先見性を改めて感じた」と意義を語った。資料の劣化を防ぐためにデジタル化の必要性も強調した。

 同館の40周年記念企画展は31日まで。旧博物館で展示していたアグーや初公開のクロツラヘラサギの剥製をはじめ、食器や制服も展示している。

 16日は「アグー」、22日は「ピトゥとグジラ」、27日は「琉球嶌真景(とうしんけい)」をテーマにしたギャラリートークがある。企画展は入場無料。

名護博物館の墓調査について説明する学芸員の比嘉ひとみさん

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