米国株の集中リスクの高まりと分散投資の重要性

(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社が2024年2月29日に配信したレポートを転載したものです。

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AIブームへの期待から一段と上昇した米国株

2024年の米国株は、2023年に見られた金利との関係性が薄れつつあります。早期利下げ観測の後退から米10年国債利回りが緩やかに上昇する中でも、S&P500指数は上昇基調を維持し、足元では節目の5,000ポイントを上回る史上最高値圏で推移しています(図1)。

足元での米国株の上昇をけん引しているのは、マグニフィセント・セブンと言われる米国の大手ハイテク企業7社です。金利上昇懸念などから2022年に一旦は調整したマグニフィセント・セブンの株価は、人口知能(AI)ブームへの期待などから再び上昇基調を強めています(図2)。

米国株は大手銘柄への集中リスクが高まる

こうしたマグニフィセント・セブン主導の株高は、米国株の過熱感を高める要因になりつつあります。

S&P500指数に占める上位10銘柄の構成比は2023年末に30.9%(うちマグニフィセント・セブンは28.0%)に上昇し、情報技術(IT)バブルのピークの1999年末(25.4%)を上回る水準にあります(図4)。こうした特定の大手銘柄への極端な集中は、2024年の米国株式市場にとっての潜在的なリスクのひとつと考えられます。

足元ではマグニフィセント・セブンの中でも、銘柄毎の業績等に応じて株価の格差が拡大する傾向がみられます(図3)。米国株を主導してきたマグニフィセント・セブンといえども、市場が期待する高い利益成長を維持できるかどうかが、底堅い株高を維持するための条件と言えそうです。

高配当株への分散投資を検討する余地も

ここで米国企業の純利益総額を集計してみると、2023年後半にはマグニフィセント・セブンが利益成長の押し上げに大きく寄与してきたことが分かります(図5)。一方、2024年にはマグニフィセント・セブンの利益成長は徐々に鈍化に転じると見込まれ、2024年後半以降はその他の米国企業に業績の主導役がシフトすることが予想されています。

2024年には企業収益回復に伴って、これまで出遅れてきたセクターにも見直しが広がる可能性があります。米国株の集中リスクを回避する観点から、割安感のある高配当株への分散投資を検討する余地もありそうです(図6)。

(※)本レター中での個別銘柄への言及は市場の理解を深めるためのものであり、特定の銘柄の売買推奨等を行うものではありません。

和泉 祐一

フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社

シニア リサーチアナリスト

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