アイルランドのヴァラッカー首相、辞意を表明

アイルランドのレオ・ヴァラッカー首相が20日、辞意を表明した。統一アイルランド党(フィナ・ゲール)の党首を即日辞任し、次期党首が決定し次第、首相職からも退くとした。

ヴァラッカー首相は記者会見の中で、首相として国を率いてきた期間は「人生の中で最も充実した時間」だったと述べた。一方、辞任は「個人的・政治的な」理由によるもので、自分は「もうこの職に最もふさわしい人物ではない」と述べた。

ヴァラッカー氏は2017年、アイルランド史上最年少の38歳で首相に任命された。

現在は共和党(フィアナ・フォイル)および緑の党との連立政権を率いている。

この日、首都ダブリンの政府庁舎の階段で演説したヴァラッカー氏は、「失業から完全雇用へ、財政赤字から財政黒字へ、緊縮財政から繁栄へ」アイルランドを導いたと述べた。

また、「子どもの権利、性的マイノリティー(LGBT)コミュニティー、女性の平等と体の自己決定権に関して、この国をより平等で近代的な場所にできたことを誇りに思う」と語った。

ヴァラッカー氏は2018年、人工妊娠中絶の合法化に向けた憲法改正についての国民投票を行った。

また自身の功績として、保育へのアクセスを改善したことや、芸術・文化、国際開発、公共インフラへの政府支出を増やしたことを挙げた。

ヴァラッカー氏は、「我々があまり成功していない分野もある」とも認めたが、「このような日には、その指摘を他の人に任せることを許してほしい」と付け加えた。

総選挙はしないと連立与党

連立与党は、ヴァラッカー氏の辞意表明が総選挙に結びつくとは考えていないとしている。

2020年の前回総選挙では、ヴァラッカー氏の統一アイルランド党は第1党から第3党に転落。その後、第1党となった共和党との連立協定の一環として、ヴァラッカー氏と共和党のミホル・マーティン党首とがそれぞれ2年間、首相の座に就くことで合意した。

2020年にはマーティン氏が首相に任命され、ヴァラッカー氏が副首相を務めた。2年後の2022年、2人は役職を交代した。

ヴァラッカー氏の辞任発表後、マーティン氏はこの決断に「驚いた」と語った。

「この場を借りて、心から彼に感謝したい。我々は非常にうまくやっていた」と、マーティン氏は述べ、連立政権が任期を全うすることに変わりはないと述べた。

連立政権で最も議席数の少ない緑の党のイーモン・ライアン党首は、ヴァラッカー氏について、「エネルギーにあふれた献身的な国の指導者であり、政府の同僚たちを常にサポートしていた」と語った。

マイケル・D・ヒギンズ大統領は、20日の記者会見の直前にヴァラッカー氏から辞任の意向を伝えられ、会談した。

大統領報道官は 「その際、大統領は首相の功労に感謝した」と説明した。

これに対し、最大野党・シン・フェイン党のメアリー・ルー・マクドナルド党首は、下院での演説で総選挙を要求した。

マクドナルド氏は、統一アイルランド党内の「コンクラーベ」によって次期首相が選ばれることは「考えられない」と述べた。

「今こそフレッシュなリーダーシップが必要だ。首相の交代だけでなく、政府の交代、そして方向性の転換が必要だ」

イギリス・北アイルランドのミシェル・オニール第一首相(シン・フェイン党所属)も、アイルランドは「選挙が必要な時期」に来ていると指摘した。

(英語記事 Leo Varadkar: I am no longer best man to be Irish PM

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