先日、オフィス家具のレンタル料が上昇しているという新聞記事をみかけました。食料品や日用品、宿泊費、光熱費などの上昇は、肌感としてもありますが、オフィス家具のレンタル料にまでインフレの波が襲いかかっているとは、考えが及んでいませんでした。記事によると、事業拡大にともなって人材採用を増やし、オフィス家具を増やす企業からの引き合いが多いとのこと。
オフィス回帰が追い風に
コロナでリモートワークが一気に普及し、オフィス不要説も出る中、オフィス家具業界は、大打撃かと思いきや、じつは、ウィズコロナ期もそこそこ堅調でした。というのも、リモートワークとオフィスワークのハイブリッドワークができるよう、かつてのオールドファッションなオフィスレイアウトから、自由なフリーアドレスに変更する企業が増え、そのために必要なオフィス家具需要が堅調だったためです。また、リモートワークでは、仕事の環境を整えるため、ホームワーク用の高級チェアがよく売れたと聞いています。
かくいうわたしも、コロナ禍で、オカムラ(7994)のデスク&チェアを購入しました。その際に、ショールームを訪れて、営業マンの方にいろいろ聞いたところ、リモートワーク用の家具のほか、駅などに設置されているオンライン会議ができる個室ブースや、ゲーム配信用の高級チェアが売れているとホクホク顔でした。そんなわけで、オフィス家具メーカーは、コロナ禍でもまったくへっちゃらで、むしろ業績は堅調だったのです。
では、アフターコロナでどんな変化があったかというと、これまたオフィス回帰が追い風になっています。冒頭でも述べたよう、コロナ禍でオフィスを縮小した企業では、出社率の上昇を背景にオフィスが手狭になっています。そのため大きなスペースが必要となり、フロアの広いオフィスへ引っ越しする動きが増えています。ちなみに森ビルの「東京23区オフィスニーズに関する調査」(23年12月公表)によると、出社率が80%以上と回答した企業は、前年度の49%から59%へと上昇し、出社率の平均は76%まで回復しています。また、引き続きハイブリッドワークを採用する企業も多く、フリーアドレス化に対応したオフィスへの改変は、まだまだ行われています。
さらに人手不足の中、よい人材を集めるために立地のよい場所にオシャレなオフィスを構える企業も増えており、そういったオフィス環境改善が、オフィス家具メーカーにとっては、絶好の商機になっているのです。
オカムラとイトーキ、それぞれの決算は?
オフィス家具といえば、先頭を走るのがオカムラ(7994)、二番手はイトーキ(7972)です。それぞれの決算を見てみましょう。
まずはオカムラから。
画像:オカムラ 「2024年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結) 」
2月9日に発表された2024年4月期の第3四半期決算は、①売上高は210,221(百万円)、②前年比+6.4%、③営業利益13,191(百万円)、④前年比+64.3%と大幅な増益です。
オカムラは、第1四半期と第2四半期の2回、通期予想を上方修正しており、会社の想定以上に好調だったことが分かります。ちなみに営業利益の通期予想は23,600(百万円)なので、第3四半期時点の進捗率は55.8%と物足りない感じを受けますが、前年度の進捗率は46.2%、前々年度は58.7%なので、ラストの1-3月で一気に追い上げる季節性があることが分かります。
画像:TradingViewより
ただ、株価推移をみると、2023年の9月あたりから、2,000円~2,300円の間で行ったり来たり、高値圏で足踏みしている状態。
一方のイトーキはどうでしょう?
画像:イトーキ「2023年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) 」
2月13日に発表された2023年12月期決算は、①売上高は132,985(百万円)、②前年比+7.8%、③営業利益8,523(百万円)、④前年比+86%とこちらも堂々たる数字です。もともとの予想値が、営業利益は7,500(百万円)でしたので、13%以上の上振れ着地となりました。
画像:イトーキ「2023年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) 」
同時に発表された新年度予想は、①売上高137,500(百万円)、②前年比+3.4%、③営業利益10,000(百万円)、④前年比+17.3%で、過去最高売り上げ、営業利益を更新予想。ちなみにイトーキも、前年度は2回の上方修正をしていますので、オフィス家具業界全体がいかに好調だったかが分かります。
画像:TradingViewより
株価推移は、直近の決算時に急騰し、いったんは利益確定で下がってきましたが、ふたたび上昇トレンドに乗っているように見えます。
両社の株価の推移は?
画像:TradingViewより
2023年からの両社の株価を比べると、イトーキはやや2倍に上昇、オカムラは60%止まりです。株価の割安さを示すPERでは、イトーキが12倍、オカムラは10倍と、オカムラのほうがやや割安感があります。
ただ、オカムラの場合は、来期の伸びがどの程度かまだ分かりません。会社四季報予想を参考にすれば、営業利益は+5.9%の伸び率で、イトーキの+17.3%に見劣りがします。それが、両社の株価の開きに表れているとも考えられるため、今このタイミングでオカムラの株を買うのは早計かもしれません。
まずは、5月に発表されるオカムラの新年度予想を確認してから動くでも十分遅くはないでしょう。もしイトーキの増益率を超えるようなサプライズ決算を出してくれば、株価調整でエネルギーを蓄えている分、上昇のスピードは速くなりそうです。乞うご期待!
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
投資管理もマネーフォワード MEで完結!複数の証券口座から配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward]