ぜんそくが肺に与えるダメージ、新たな原因を発見=英研究

ミシェル・ロバーツ、BBCデジタル保健編集長

ぜんそくが引き起こすダメージの多くについて、その背景にある原因を新たに、イギリスの研究チームが発見したと発表した。

この研究では、気道の内壁を覆う細胞が、発作時に圧迫されて破壊されることが分かった。

そして、その後遺症に対処するのではなく、損傷を予防するための薬が、ダメージの連鎖を断ち切るかもしれないという。

英キングス・コレッジ・ロンドンによるこの研究は、学術誌「サイエンス」に掲載された。

ぜんそく患者の気道は繊細で、花粉やペットの毛、運動などが症状の引き金になる。

気道が腫れるとせきやぜいぜいとした息、息切れなどの症状が起こる。

既存の薬や吸入薬はこの腫れを抑え、気道を開く働きがある。

しかし、何度も発作が起きると、気道に傷が残ったり、気道が狭くなったりするという。

発作が起きると、気道の周囲にある平滑筋が収縮し硬くなる。これは気管支収縮と呼ばれる。

キングス・コレッジ・ロンドンのチームはこのプロセスを、ネズミと人間の肺組織の標本を使って詳細に研究した。

研究を主導したジョディー・ローゼンブラット教授によると、気管支収縮で気道の細胞がダメージを受けると、長期的な腫れや創傷治癒、感染などにつながり、さらに発作が起きるという。

こうした気道内壁のダメージはこれまで見過ごされてきたと、ローゼンブラット教授は述べた。

「この上皮内膜は、感染症などに対する身体の第一の防御ラインであるにもかかわらず、ぜんそく発作の際に傷つけられてしまう」

「絶え間なく傷つけられ、悪循環に陥る」

そのうえでローゼンブラット教授は、「このダメージを阻止できれば、発作がまったく起こらなくなるかもしれない」と語った。

「切実に必要」

研究チームは予防方法として、ガドリニウムという成分を調べている。少なくとも、ネズミをつかった実験では効果があったようだ。

しかし、人間相手の臨床試験に使えるほど安全性と効果が高いかを見るにはさらに研究が必要で、数年単位の時間がかかるという。

ぜんそく患者の慈善団体「アズマ・アンド・ラングUK」で研究・革新ディレクターを務めるサマンサ・ウォーカー博士は、「この発見は、ぜんそく患者が切実に求めている新しい治療法の可能性を探る、重要な扉を開くものだ」と述べた。

同団体によると、ぜんそく患者は処方された薬を正しく使い続けることが不可欠だが、そうすれば多くの人は症状に妨げられることなく生活できるはずだという。そのうえで、まだ症状が残る人は、医療専門家に相談することが重要だという。

「既存のぜんそく治療がうまく機能しない人々もたくさんいる。なので、ぜんそくの原因によりよく取り組み、新しい治療法を見つける研究に資金を提供し続けることが不可欠だ」

イギリスでは500万人以上がぜんそくを患っており、成人の約12人に1人、子供の約11人に1人がぜんそくだ。

ぜんそく患者の大半は、2種類の吸入薬を持っている。ひとつは、定期的に使い、のどの腫れと症状を予防するもの。もうひとつは、発作時に素早く気管を広げて呼吸しやすくするものだ。

一方で、気管拡張薬が効かない場合、発作が4時間以上続く場合、あるいは何か不安な症状が出た場合は、ただちに医療機関に相談する必要がある。

(英語記事 Asthma: Scientists find new cause of lung damage

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