【双葉の産業拠点】物流機能を持続可能に(4月11日)

 東京電力福島第1原発事故からの復興を目指す双葉町の中野地区復興産業拠点で、企業の集積が進んでいる。町が公募した区画の大半は埋まり、残る用地は造成後に誘致に乗り出す。持続可能な物流の仕組みを構築して優位性を打ち出し、労働力確保に向けた住居対策にも力を注いでもらいたい。

 町産業交流センター、東日本大震災・原子力災害伝承館周辺の34.3ヘクタールの産業拠点で、23件の企業進出が決まっている。敷地面積は計約24ヘクタールで、全体の7割に及ぶ。2026(令和8)年度中に全ての整備が完了する見通しで、原発事故に伴い全町避難を強いられた町の復興を産業面から支える。

 輸送環境は十分とは言い難い。原発事故の被災地は、移転などで運送業者が減り、輸送サービスが長く休止していた。このため、宅配業者では運べない大きさや重量の材料仕入れはいわき、郡山両市などの配送業者の拠点まで運んでもらい、その後、自ら受け取りに行かなければならなかった。同様に製品発送は独自にチャーター便の手配などを迫られていた。

 富岡町に進出した運送業者が今年度、産業拠点と大熊、浪江両町の工業団地などを結ぶ路線便を開設した。ただ、一定の荷物量がなければ、路線便は維持が難しくなる懸念がある。産業拠点内はもちろん、他の工業団地の企業と連携した共同配送などを検討し、荷物量を安定させる取り組みを3町で推し進める必要がある。

 JR常磐線をまたぎ、常磐自動車道常磐双葉インターチェンジと産業拠点を直結する県道井手長塚線「復興シンボル軸」が2025年度末に開通する。交通環境の進展と物流機能の再生を前面に押し出し、一層の企業誘致と産業振興につなげるべきだ。

 避難指示の解除から1年7カ月が経過した中、双葉町の居住者は80世帯102人となっている。労働力不足が慢性化している企業もある。町は企業の従業員や移住者らが入居できる再生賃貸住宅を整備しているものの、所得制限があって誰もが入居できる状況にはなく、住宅建築への補助制度を創設するとしている。国は、復興に向けた町の住居対策を手厚く支援するよう求めたい。(円谷真路)

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