教職員は奨学金の返済を免除へ。教職大学院卒が対象。奨学金の返済減免制度について解説

文部科学省は、教職員として就職した人に対して貸与型奨学金の返済の免除・軽減を実施する方針を発表しました。

教職員の奨学金の返済免除制度は、以前にはありましたが1998年に廃止されています。

教職員の奨学金の減免を実施する背景には、どのような理由や課題があるのでしょうか。

この記事では、奨学金の返済減免制度について解説します。

教職員の奨学金免除

奨学金免除の対象になるのは、教職大学院を修了した教員です。

それ以外の大学院を修了した教員については、免除となる条件が追加される可能性があります。

学部生については免除の対象に含まれない見通しです。

文部科学省によると、教職員の人材不足は深刻で、公立校教員の採用倍率は3.4倍と過去最低の水準となっています。

出典:文部科学省「中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会」

奨学金を減免して、教員の人材確保を進めたい狙いがありますが、同時に教員の質を向上させたいという狙いもあります。

今回、教職大学院を修了した教職員のみを免除の対象とした背景には、教員の質の向上を優先したことがあります。

奨学金の返済を免除する制度は、2025年春の新卒採用教員から適用する方針です。

では、現行の奨学金の減免要件を確認しましょう。

現行の奨学金の減免要件

ここからは、教職員でなくても、奨学金が減免できる要件について解説します。

奨学金の軽減要件

奨学金の返済額が軽減できる制度は「減額返還制度」と「返還期限猶予」の2種類があります。

  • 減額返還制度:毎月の返済額を少なくできる
  • 返還期限猶予:返済を一時的に先延ばしできる

それぞれの制度を利用する場合、一定の収入要件を満たす必要があります。

減額返還制度

  • 給与所得者:年間収入325万円以下
  • 給与所得者以外:年間所得225万円以下

返還期限猶予

  • 給与所得者:年間収入300万円以下
  • 給与所得者以外:年間所得200万円以下

ただし、いずれの制度も返済総額が減るわけではありません。

奨学金の免除要件

奨学金の返済が免除される要件は、次の通りです。

  • 死亡
  • 精神もしくは身体の障害

「精神もしくは身体の障害」による免除の適用を受けるには、「症状が固定している」「労働能力が喪失している」状態である必要があります。

免除の申請には、主治医の診断書と相談が必要です。

大学院の授業料後払い制度

2024年度から、これまでの減免制度に加えて「大学院の授業料後払い制度」が新設されました。

在学中は授業料を納付せず、卒業後の所得等に応じて納付する制度です。

在学中の授業料を日本学生支援機構が立て替えて、卒業後に利用者が機構へ支払います。

返済額は、利用者の所得に応じて決まります。

出典:文部科学省「奨学金事業の充実」

例えば、子どもが2人いる場合は、年収400万円程度までは返済は行われません。

本人の年収が300万円程度以下であることが利用条件です。

また、授業料後払い制度は無利子で利用できます。

大学院の授業料後払い制度は、2024年秋から始まります。

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