宇都宮市、といず事件の検証不十分 包括外部監査で指摘 14年乳児死亡事故、市の過失認めた最高裁判決後の対応

宇都宮市役所

 宇都宮市子ども部の事務事業について公認会計士6人が監査した2023年度の包括外部監査報告書が17日までに市に提出された。14年に認可外保育施設「といず」(廃止)で起きた乳児死亡事件について、施設を指導監督する市の過失を認めた最高裁判決が確定した後の市の対応を「判決で指摘された事項について必要十分な対応策の検証が行われていない」と指摘した。

 事件を巡っては、「といず」で宿泊保育中だった山口愛美利(やまぐちえみり)ちゃん=当時9カ月=が死亡。遺族が市などに損害賠償を求めた民事訴訟で、市が抜き打ちで施設の立ち入り調査を実施する注意義務を怠ったと認定した判決が23年に確定した。

 報告書は、事件後の市の対応を「(夜間立ち入り調査の実施など)いくつか改善策を講じているが、総括的な議論はされていない」と指摘。市が設置方針を示している外部有識者の市重大保育事故再発防止検証委員会も開催のめどが立っていないとし、「検証委員会の結論を待つだけでなく、速やかに市としての対応策を検討すべきだ」とした。

 これについて市子ども政策課は「引き続きご遺族の意向を確認しながら、検証委の早期開催に向けて調整を進めていく」とする。

 一方、愛美利ちゃんの母親(46)は「客観的に見れば誰でもそう思う、当たり前の指摘だ。市のやる気のなさ、無責任にもほどがある」と憤りを隠さない。

 事件の初期から市の対応の検証を求めてきただけに、現状は「ひたすら逃げて、みんなが忘れて風化するのを待っているのではないか」とさえ映る。「どんなに自分たちの腹が痛かろうと、けじめとして市がやるべきことをやる。それが私たち遺族に対するせめてもの誠意のはずだ」と訴える。

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