働きすぎると年金が減るって本当?年金+賃金が一定額を超えると減額される「在職老齢年金」制度

総務省が2024年2月に発表した「労働力調査」によると、65~69歳の就業率は50%を超えていることがわかりました。

働く高齢者の割合が増える一方で、年金が減額されて支給される問題も生じています。

こうした問題の背景には「在職老齢年金」が関係しています。

この記事では、「在職老齢年金」の制度について解説します。

在職老齢年金とは?

在職老齢年金とは、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取った場合、年金の一部または全額を支給停止する制度です。

支給停止の対象となるのは老齢厚生年金のみなので、老齢基礎年金は対象になりません。

出典:厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方」

厚生労働省の調査では、65歳以上の高齢者で在職老齢年金の適用を受けている人は、41万人でした。

全体の17%が、在職老齢年金の適用を受けています。

出典:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」

在職老齢年金が適用されるのは、賃金と年金の合計額が50万円を超えた場合です。

50万円を超えた金額の半額が、支給停止されます。

賃金と年金を受け取った場合に、在職老齢年金がどのように適用されるのかシミュレーションしてみましょう。

在職老齢年金をシミュレーション

以下の条件でシミュレーションしてみます。

  • 老齢基礎年金(月額):6万円
  • 老齢厚生年金(月額):10万円
  • 賃金(月額):42万円
  • 老齢厚生年金と賃金の合計:52万円

厚生年金と賃金の合計額が52万円なので、50万円を超える部分の半分、つまり1万円が支給停止となります。

老齢厚生年金の支給停止額:(52万円-50万円)÷2=1万円

本来、受け取れるはずの老齢厚生年金10万円が、9万円に減額されます。

老齢基礎年金6万円は減額されないので、実際の支給額は15万円になります。

このように、在職老齢年金が適用されると、もらえるはずの老齢厚生年金が支給されなくなります。

年金が支給停止されないためには、以下のように対応する必要があります。

  • 年金との合計が50万円以下になるように、賃金を調整する
  • 老齢厚生年金の受給開始を遅らせる

また、働きながら公的年金を受け取っている場合、6月に始まる定額減税にも注意が必要です。

定額減税は、1人あたり所得税3万円、住民税1万円が減税される制度です。

勤務先と年金からそれぞれ二重で減税を受けることになるため、確定申告が必要になります。

詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。

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【定額減税】年金受給者は6月と10月に実施。給与収入がある場合は二重減税に注意。確定申告が必要な場合も

出典

  • 厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方」
  • 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」

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