「消滅可能性」福島県内33市町村 20~30代減少率 川俣78.1%、平田75.7% 人口戦略会議推計 

 民間組織「人口戦略会議」が将来的に「消滅の可能性がある」と見なした市町村に、県内は33市町村が該当した。会議が24日、公表した。2020(令和2)年~2050年の30年間で子どもを産む中心世代の20~30代女性が50%以上減るとの推計を根拠に分析しており、県内の自治体は少子化や人口減少への危機感を一層強めている。子育て支援策の拡充を図るなどして若い世代の呼び込みに注力する。

 「消滅」は人口減少が進み自治体運営が立ちゆかなくなる状況を指す。県内市町村の分析結果は【表】の通り。浜通りの13市町村は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響を受けていることから、個別の算出はしていない。浜通り13市町村を一つの自治体として計算すると、消滅の可能性がある自治体は7割になる。市町村別で最も若年女性の減少率が高かったのは川俣町の78.1%。平田村が75.7%で続いた。持続可能性が高いと考えられる「自立持続可能性自治体」に当たる市町村はなかった。

 同会議の分析は昨年12月に国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が発表した地域別将来推計人口に基づいている。社人研は震災と原発事故の影響が大きい浜通り13市町村は推計が困難という理由で一つの地域として算出しており、同会議も同じく浜通りを一つの枠組みに位置付けた。

■県、支援や移住対策強化へ 川俣町長「レッテル貼り」懸念

 県は人口減少対策を重要な課題と位置付け、各種施策を展開している。今後、結婚・妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援策や移住・定住対策を強化する。今年度内には2025年度以降の5年間の「ふくしま創生総合戦略」を定める。

 内堀雅雄知事は「本県が直面している若者の県外流出や出生数の低下という現状に対してあらためて警鐘を鳴らすものと受け止めている」と述べた。「若い世代が将来に夢や希望を持ち『福島で働きたい』『福島に住み続けたい』と思ってもらえるよう自然減と社会減の両面から対策に全力で取り組む」と強調した。

 最も若年女性の減少率が高かった川俣町の藤原一二町長は「消滅可能性自治体というレッテルを貼られれば、町に移り住みたいと思う人が減る」と懸念する。「調査結果を受け止め、着実に施策を進め子育て世帯の呼び込みにつなげていく」と語った。

■全国744市町村全体の40%超 秋田、青森、山形割合高く

 将来的に「消滅の可能性がある」とされたのは、全国の744市町村で全体の40%超に当たる。都道府県別では0~96%まで割合にばらつきがあった。人口減少の深刻さを示し、行政や民間の対策を促す狙いがある。市区町村数に占める消滅可能性の割合を都道府県別に見ると、秋田96%がトップで、青森88%、山形80%が続いた。低いのは沖縄0%、東京3%、滋賀11%だった。

 人口戦略会議副議長の増田寛也日本郵政社長が座長を務めた「日本創成会議」は2014年、同様の根拠で、消滅可能性がある896自治体を公表した。戦略会議は報告書で「14年に比べ改善が見られる」と評価したものの、主な要因は外国人住民の増加だとして「少子化基調は変わっていない」と警鐘を鳴らした。

 このほか別の指標を組み合わせ、1729市区町村を大きく4分類した。内訳は消滅可能性744のほか、100年後も若年女性が多い「自立持続可能性自治体」65、人口流入が多いものの出生率が低い「ブラックホール型自治体」25、いずれにも該当しない「その他」895だった。

 必要な対策は分類によって異なり増田氏は消滅可能性に多い小規模自治体では若者らの雇用の場を創出する必要があると指摘した。

※消滅可能性自治体 有識者らでつくる「日本創成会議」(座長・増田寛也日本郵政社長)が2014年5月に公表した報告書で、独自に定義した。消滅は人口減少に歯止めがかからず、自治体運営ができなくなる状態を指す。対象896自治体のリストを公表したことで人口減少対策の機運が高まり、政府は東京一極集中の是正を目指す「地方創生」を始めた。

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