【西武】窮地を救った若林楽人 〝呪縛〟から解放させた中村剛也の「ひと言」とは

ヒーローインタビューを受ける西武・若林

西武は1日の日本ハム戦(ベルーナ)に3―1でサヨナラ勝ち。3試合連続のサヨナラ負けを含む連敗を4で止めた。この日のヒーローは「6番・右翼」で先発出場して2回に1号先制ソロ、9回にサヨナラ2号2ランを放った4年目・若林楽人外野手(26)だった。

お立ち台で若林は「ライオンズファンの皆さん、こんばんは! 若林楽人です」と妙な第一声でファンを沸かせた。「本当にやるしかない試合だったので(スタンドに)入ったかどうか分からなかったんですけど、よかったです。(打席が)絶対に回ってくると思っていたので無心で思いっ切りいきました」。こう言ってチームを救った会心の一撃を振り返った。

本来はその俊足を生かしてチャンスメーカー的役割を期待されている26歳。しかし、そもそも西武が若林に着目したのは2020年のドラフト直前、駒大4年時の秋季リーグ戦で打率3割1分、4本塁打という意外な長打力を渡辺GMらスカウト陣が目撃して評価したからだ。

1番打者は簡単に初球から打ちにいってはいけない、相手投手に球数を投げさせなければならないなど、何かと制約も多い打順でもある。そのため、持ち味である思い切りの良さを生かせないケースもある。ただ、6番に入ったこの日の効果的な2発はいずれも相手投手の初球、変化球を果敢に打っていったものだった。

若林は試合を決めた劇弾について「もう調子に乗っていけじゃないですけど、ベンチからそういう声もありましたし、結果を恐れていてもいいことはないと思っていきました」。迷わず本来の姿勢を発揮していった結果だと語った。

そして、その心境に至った経緯は前日の敗戦後にレジェンド・中村剛也内野手(40)が野手を集めた緊急ミーティングの中で語った言葉にあったという。

「選手間のミーティングで中村さんが『ピッチャーと対戦できていない』と。形ばかりにこだわって、四球を取ろうとかばかりで(相手から見た)怖さが全然ないよねという話になった。自分もそう思ったし、もっともっとアグレッシブにいっていいのかなと思った」

好投する先発陣を見殺しにするばかりの深刻な貧打の中で、中村の核心をついた指摘が自身を迷いから解き放ってくれたという。「開幕から三振をしないように、打順によって役割を果たす。そういうことばかり気になって自分が一番結果の出る姿勢ができていなかった」と若林は振り返る。

チームが苦しい時に同じ方向を向かない。〝頼れる異端児〟が本来の持ち味を中村の言葉で再認識させられた若林だった。

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