【NHKマイルC/全頭診断】“13戦連続馬券内”のモンスター騎手が虎視眈々 GI馬2頭はデータ面で盤石

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今週は東京競馬場で、第29回NHKマイルC(GI、芝1600m)が行われる。2歳GIを制したジャンタルマンタル、アスコリピチェーノが参戦をはたす今年。史上最高レベルの豪華メンバーで3歳マイル王の座を競う。

ここでは馬券検討のヒントとして、出走馬18頭の全頭診断を行う。

◆【NHKマイルカップ2024予想/データ】「ジャンタルマンタルvs.アスコリピチェーノ」史上初となる最優秀2歳牡馬・牝馬対決 好データ続々該当で上位に取りたいのは……

■NHKマイルカップ2024 出走予定馬全頭診断

・アスコリピチェーノ

無傷の3連勝でGI馬に輝いた2歳時。年明け初戦が桜花賞のぶっつけ本番だったが、阪神JFで下したステレンボッシュに逆転を許す形となった。とはいえプラス10キロの馬体重増かつ自身のマイルの持ち時計を更新したように、確かな成長の跡が見られたレース。左回りは【2-0-0-0】、本レースに参戦したGI勝ちのあるダイワメジャー産駒の成績【2-1-0-1】を加味したとき、大きく評価を下げる理由は見当たらない。

・アルセナール

前走クイーンカップ2着から本レースに参戦をはたす馬。その前走は自身の持ち時計を3秒近く詰めており、直線進路が塞がるシーンがありつつ外差し決着と思われたところをインから渋太く伸びた。デビューから東京芝1600mにこだわったローテーションを歩んでおり、社台ノーザン系クラブ馬の事情かもしれないが桜花賞をパスして臨む一戦。メンバー中最速の当舞台持ち時計も含め、穴妙味ある1頭と言えそうだ。

・アレンジャー

前走アーリントンカップは一気の距離延長で激走。内枠を活かしてロスなく立ち回った鞍上の好騎乗だった。翻って、今回の舞台はごまかしがきかない東京マイル。一気の逃げ、爆発的な末脚など良くも悪くも尖った性能が求められる舞台でもあり、連続好走は至難の業か。

・イフェイオン

過去10年のNHKマイルカップにおいて、中山芝1600m重賞勝ち馬は【0-0-0-11】。牝馬ではのちのヴィクトリアマイル2着馬プリモシーンも馬券外に敗れていた鬼門データだ。この舞台での一変を望むのは酷に映る。

・ウォーターリヒト

スプリングS→皐月賞→NHKマイルカップと3連連続での関東圏輸送。年明け5戦目とお釣りがない状態である可能性が高く、強調材料は乏しい。

・エンヤラヴフェイス

朝日杯FS以降は掲示板外が続く馬。厳しい。

・キャプテンシー

2番人気に支持された前走ニュージーランドT。結果は16着とまさかの大敗を喫したが、馬番フタ桁番から控える競馬を余儀なくされたこと、自身初の道悪で自慢のスピード能力を発揮できなかったことが影響したレースだ。参考外で良い。1分32秒5の走破時計で逃げ切り勝ちのジュニアカップで下したチャンネルトンネル、アレンジャーはのちにアーリントンカップで馬券内。逃げたときの成績【2-0-0-0】も含め、一変を期待したくなる穴馬候補だ。

・ゴンバデカーブース

出走を予定していたホープフルSはまさかの出走取り消し。ボンドガールにシュトラウス、新馬戦で負かしたオーキッドロマンスとのちの重賞好走馬を相手にしなかったパフォーマンス発揮は持ち越しとなった。ぶっつけ本番でのGI参戦を100%プラスと捉えるのは難しいが、2歳時に芝1600m重賞で2着に0秒3差以上をつけた牡馬はクラリティスカイ、ダノンプレミアム、ステラヴェローチェと2-3歳のマイルGI好走馬がズラリと並ぶ。目下13戦連続で東京芝1600m馬券内継続中のJ.モレイラ騎手騎乗も魅力だ。

・ジャンタルマンタル

1000m通過57秒5、勝ち時計1分57秒1のレコードを記録した前走皐月賞。そのなかで先行して馬券内に入ったのは勝ち馬ジャスティンミラノとこの馬、つまり共同通信杯でワンツーをはたした2頭だった。レースレベルは申し分なく、東京経験がある点もプラス材料。過去10年のNHKマイルCにおいて、前走皐月賞でひと桁着順だった馬は【2-1-0-0】とデータもよく、高速馬場好走の反動さえなければ上位争いは必至か。

・シュトラウス

暴走気味な逃げとなった朝日杯FSを踏まえ、後方からレースを進めた前走。それでも完璧に折り合ったとは言い切れないが、いまは教育を施している段階なのだろう。その気性面から距離延長がプラスに働くとは思えず、例年よりスローが想定される展開も気がかりだ。

・ダノンマッキンリー

前走ファルコンSは鮮やかな直線一気での勝利。デビューから連勝を飾った当時のパフォーマンスが蘇ったような印象で、思い切って終いの脚にかけるスタイルもプラスに働いたのだろう。とはいえ過去10年のNHKマイルCにおいて、前走ファルコンS勝ち馬は【0-0-0-8】と大不振。例年との比較で前に行く馬が少ない印象のメンバー構成でもあり、距離延長による折り合い面も含めて慎重な評価を下したいところだ。

・チャンネルトンネル

大崩れこそないが、勝ち切るためのワンパンチも足りない現状。立ち回りの上手さで勝負したいタイプである点から、東京芝1600mのGI適性には疑問符が付いてしまう。

・ディスペランツァ

連勝で重賞制覇を成し遂げた前走。マイルで負けなしの戦績は魅力も、同馬とのコンビで2勝のM.デムーロ、前走重賞勝ちに導いたJ.モレイラが騎乗しない点は割引材料と言わざるを得ない。当距離で1分32秒台の持ち時計を誇る馬が複数頭いるなかにあって、持ち時計も少々心もとない印象だ。

・ノーブルロジャー

無敗が途切れた前走毎日杯。勝ち馬から大きく離されてしまったものの、当時は自身初の1800mかつ重馬場が影響したと捉えれば悲観する内容ではないだろう。ノーザンファーム産の良血馬がほとんどいないにもかかわらず、今年のJRA平地重賞で【2-2-1-2】馬券内率71.4%と驚異的な数字を叩き出している吉岡辰弥厩舎の所属馬。クラシック戦線には目もくれず、東京マイルのデビュー戦からこの舞台を見据えたローテーションも魅力だ。

・ボンドガール

予定していた阪神JFを回避し、年明け初戦はニュージーランドTへ。2歳時に描いていたプランにはない出走だったと思われるが、2着を確保したのは能力の証明と言えるだろう。とはいえ当時は中山芝1600mで内枠、道中は好位追走と枠の利を最大限に活かしての好走。抜群のスピードや末脚の破壊力を示すには至っておらず、新馬戦で下したのちの重賞好走馬が3歳GIでは歯が立たない状況にある点も不安材料だ。

・マスクオールウィン

直線の長い東京・阪神芝外回りは【0-0-0-2】、勝ち馬と0秒8差以上も離される完敗だった。変わり身は望み薄か。

・ユキノロイヤル

前走ニュージーランドTは中山芝1600mの内枠かつ、時計のかかる馬場コンディションが功を奏した印象。好天予報で高速決着が濃厚な当舞台替わりはマイナスだろう。

・ロジリオン

前走ファルコンSはもったいない競馬だった。内枠からロスなく運んだものの、直線ではまったく前が開かずジ・エンド。まともなら馬券内突入の可能性は高かっただろう。重賞級の能力は京王杯2歳Sが証明済みだが、本レースは社台ノーザン系クラブ馬が幅を利かせる傾向にある。過去の勝ち鞍は1400m戦に限定されており、追い風となる材料はもっとほしかったというのが本音だ。

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UMAJIN.netより一部編集・転載(2024年5月2日 18:00公開の記事

著者プロフィール

田原基成(たはらもとなり)●競馬評論家
競馬予想の魅力を世に発信し続ける「競馬ストーリーテラー」。予想に対して謎ときに近い魅力を感じており、ローテーション・血統の分野にて競馬本を執筆。現在はUMAJIN内「競馬サロン」にてコラム【競馬評論家・田原基成のいま身につけるべき予想の視点】 執筆中。『SPREAD』ではデータ分析から読み取れる背景を紐解き、「データの裏側にある競馬の本質」を伝えていく。

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