【銀の盾に聞いてみた】スキンヘッドに装着したスイッチでの演奏が人気の、「BOZESTYLE」にインタビュー。後編では演奏の裏側にある努力や、視聴者とのニーズのつかみ方、これからの目標について、メンバーにじっくり語ってもらった。
――これまで演奏した中で一番難しかった曲は?
小林 「アンパンマンのマーチ」かな…。
合津 あー、確かに。
小林 伴奏まで再現しようとすると、メロディー担当、伴奏担当ってきれいに分けられなくなるんですよ。立ち位置の関係もありますし、1つの頭に付けられるスイッチの数にも限界があるので、メロディーを演奏ながら伴奏の一部を肩代わりする必要も出てくるんです。そうするともう手がゴチャゴチャして。
ニコラス ハンドベルの演奏に近いとは思いますけど、それをもっと細分化しているようなイメージですね。
小林 動画だけでは、誰が何の音を出しているか分からないと思います。本当に機械仕掛けのように動いているので。
――練習時間も長くかかりそうです
ニコラス 難しい時は練習だけして、後日撮影することもあります。最初のころは長編1曲に3、4か月はかけていたかな。
――覚えるコツはありますか
ニコラス 自分がメロディー・伴奏も含めて、一度図に書き起こすんです。BOZESTYLEでは「頭蓋譜(ずがいふ)」って呼んでまして。(ニコラス氏、オリジナルの「頭蓋譜」を取り出す)
――全く見たことのない譜面ですね…
3人 まあないでしょうね(笑い)。
ニコ 本当は動画でも見せたいですけど、見せたところで分かってもらえないと思うので。ちなみにこれは人気のゲーム「UNDERTALE」の曲をフルでやった時の譜面です。
小林 それからこれは僕が書いたYOASOBIの「夜に駆ける」なんですけど…。
ニコラス これは数千年後に出土しても解読できないね(笑い)。
合津 この番号は何を指してるんですかってなっちゃう。
――では日常で耳にした曲の「叩きやすさ」を考えることも?
ニコラス ありますあります!
小林 この曲はゆっくりだけど難しそうだよね、みたいな話もします。
ニコラス 「アンパンマン」を経て、イメージではない実際の難易度が分かるようになってきましたね。
――若い世代に向けてどういった選曲を?
ニコラス これに関しては完全にリクエストです。TikTokを始めた時から、知り合いから視聴者のリクエストにしっかりと答えることが大事と聞いていたので。
――人気ゲーム「UNDERTALE」の楽曲も多く投稿しています
ニコラス 実はコメントが来るまで「UNDERTALE」のことは知らなかったんですよ。それまでは本当に普通のおじさんだったので…。ただゲーム内の人気曲「MEGALOVANIA」のリクエストが何度も来るので、試しに演奏してみたらすごく再生回数が伸びたんです。以降は知らないからといってスルーせずに、来たものは1回やってみようということになりました。
――ゲーム音楽は電子音との相性も良さそうです
ニコラス 音の馴染みもいいですし、視聴者からの反応は上々ですよ。
合津 実際ゲーム好きな知り合いからは「合津さん、あのゲームのあの曲をやるなんてすごいじゃないですか!」みたいな反応がありました。
小林 いとこの子供もいつの間にかBOZESTYLEのことを知っていて。親戚のおじさんがやっているとは思っていなかっただろうな。
――実際に若い視聴者は多いのですか?
合津 割と多いんじゃないかなとは感じていますね。
ニコラス この前も卒業シーズンに「旅立ちの日に」のリクエストが来たんです。でも僕らの世代は知らなくて。
小林 曲名もすごく普通の言葉だからスルーしてたんです。調べたら「今の人はこれを唄っているんだ…」と驚きましたよ。
――もっと聞いてほしい曲は?
小林 前に「モンスターハンター」のオープニング曲(「英雄の証」)を演奏して。すごく音も合っているし、オーケストラ的な展開もあって、動画の出来もすごく良かったんです。〝世界のモンハン〟だし、これは伸びるぞと思っていたらあまり伸びなくて。
ニコ あれは難しかったよね。
小林 かなり動きも工夫した動画だと思っているので、今でも納得は言ってないです。
合津 逆に「ヤマダ電機」のテーマソングは意外なまでに再生されたんだよね。
小林 全然難しくないし一瞬で撮れた「ヤマダ電機」が伸びると、「モンハンは何だったの?」って…。
3人 (笑い)
ニコラス 結局〝ネットミーム〟になったものの人気は根強いですね。去年から流行った「猫ミーム」に関する楽曲も総じて再生されたし、ドリフの「盆回り」も昔ニコニコ動画で流行っていたと聞くし。何だかそういう方向の曲が愛されていますよね。
――海外ユーザーからの反応
ニコラス 海外の皆さんから人気なのは「ジョジョの奇妙な冒険」ですね。
小林 「チェンソーマン」のオープニングだった米津玄師の「KICK BACK」も評価が良くて。
ニコラス アニメはやっぱり反響が大きい印象ですね。後はシティ・ポップ! (泰葉の)「フライディ・チャイナタウン」はすごい反響がありました。
――今後の目標を教えてください
ニコラス 外でライブがやりたいですし、予算が許すなら海外に進出したいです。いつかはニューヨークのタイムズスクエアで「おい、あいつら頭を叩いてるぜ!」と言われたいので。
合津 やっぱり独自路線の活動ですからね。ライブハウスよりはストリートの方が目を引くのかなと思います。
――ミュージシャンとしての思いも強いのでは
ニコラス 実は周りのバンド仲間からは「何やってんの?」って引かれていて。「お前ギター弾いてないじゃん」って言われるんです。
小林・合津 (笑い)
――合津さんも同じバンドマンですが
合津 僕の周りは寛容というか、「合津さんすごいね」って言ってくれるので…。
ニコラス だって合津君は動画の中でギターを弾いてるから!
合津 そこは確かにあるかもしれないですね(笑い)
ニコラス 動画でも「(合津氏の)ギターが入ると格好いいね」とか言われていて。小林も元々俳優ということで一つ一つの動作が〝プロ〟だし、演奏中に歌を披露すれば「イケボ(イケてるボイス)」って褒められているんです。なのに僕には「1人だけ運動量多くて草」みたいなコメントばかり来て。
小林 そう言われると途端に気の毒になってきたな(苦笑)。
ニコラス 僕にとってはこれもれっきとしたバンド活動なんですけどね。
――最後にファンに向けたメッセージを
ニコラス これからもっとレベルアップして、いつかは世界に挑みたいと思っています。今後も皆さんを驚かせるようなものを作っていきますので、どうか応援よろしくお願いします。
☆ぼーずすたいる 頭髪の薄いミュージシャンを主体として、2010年に結成された音楽ユニット。スキンヘッドに装着したスイッチを叩いて演奏する動画が人気を集め、ユーチューブチャンネルの登録者は10万人を突破した。現在はプロデューサーの枕本トクロウ氏、パフォーマーのニコラス・ケイ氏、小林直人氏、合津亮也氏の4名を中心に活動する。