【コラム・天風録】トップの決断

 カネが目当てではないそうだ。「核のごみ」最終処分場の選定に向けた調査を受け入れると、佐賀県の玄海町長がきのう表明した。全国3例目、原発を抱える自治体では初めてである▲地元の旅館や飲食店の組合が受け入れを求め、議会も賛成したのを受けて、首長として決断した。ただ、誘致の動きが表面化して1カ月足らず。進展の速さに、住民に広がる不安が置き去りにされないか、心配になる▲「国民的議論を呼び起こすきっかけになれば」と玄海町長は話す。とはいえ、逆効果となる恐れは否定できない。原発のある自治体のどこかが処分場を引き受けてくれるはず―。電気を使いまくっている都市住民は安易に考えてしまうのではないか▲玄海町の動きに原発を抱える自治体は予防線を張る。島根県知事は、県内で調査の話があれば全力で反対すると言い切った。既に原発リスクを負っているから、処分場まで引き受けさせられる責任はないというわけだ▲処分場探しは一歩前進だろう。それでも、国の思うようには進んでいない。公平なリスクの分担や電力大消費地の責任…。そうした視点による選定方法見直しを国のトップが決断する日は近いかもしれない。

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