【新理事長インタビュー(上)】〈石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)・細野哲弘氏〉オールジャパンで企業の開発支援 資源の選択肢広げる発想を

――4月1日付で理事長に就任した。感想を。

 「16年前に金属鉱業事業団と石油公団を統合し、JOGMECが設立された際に経産省の職員として関わった経緯もあるので、不思議なご縁を感じている。もちろん当時とは状況が変わり、金属、石油・天然ガスだけでなく、石炭、地熱に対する支援という機能が加わり、政策的なメニューも時代のニーズや実情に合わせて充実されてきたという印象がある」

――資源を取り巻く環境をどうみているか。

 「鉱体の深部化や鉱区の奥地化などで開発条件は悪化している。また、開発に要する時間の長期化や、それゆえに市況変動の影響を受けやすくもなっている。他方、コバルトなどのレアメタルでは資源の偏在性という課題も顕著である。そういう意味で資源の不確実性は高まっている」

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)・細野理事長

 「ただ、技術革新も進展している。先を見通した判断、しかもどの程度先を見通すかという観点が必要かと思う。例えば電池材料として注目されているコバルトも価格高騰が続けば省資源化が進むだろうし、将来的にはコバルトが必要なくなる可能性すらある。こうした資源を扱う日本企業にはどういう構えと時間軸でメニューを用意するかが求められている」

――JOGMECの果たすべき役割とは。

 「この組織には専門性の高いスタッフがそろっており、長い歴史の中で培ってきたノウハウや技術がある。その蓄積を最大限に生かすことが一つ。一方、我々だけではできることに限界がある。日本企業が活躍するために必要な支援を関係機関、アカデミア、関係省庁などと緊密に連携しながら考え、一つでも多くのメニューをオールジャパン体制で用意することが最も重要だと考える。ただし、我々は開発の手伝いはできるが、開発自体をやるわけではない。民間企業に我々の事業をジャンピング・ボードとして使ってもらい、営業活動につなげてもらうことが大前提であり、最終的に受け手がないところに出ていくことはできない。民間では取り組みにくいが、我々が取り組むべき案件という見極めとバランスが重要になるわけだが、そこが難しくもある。ただ、難しいからといって逃げるつもりはない。そこは時代の流れに合わせて挑戦していく」

 「独立行政法人として一定のルールに従い、組織の健全性を確保する必要もある。我々が扱うのは民間企業だけでは難しい案件。それはリスクを負うということであり、時には財務の健全性を損なう可能性もある。それをどこまで許容するかという課題を自問しながら進めていく必要がある」

――石炭については。

 「脱炭素化という流れの中では、不利に扱われがちだが、エネルギー基本計画の中でも然るべき位置付けをしてもらっていると思う。日本のように資源に乏しい国はエネルギー源、あるいは金属源の選択肢を数多く持っているほうが安全保障上、有利なのは間違いない。特に石炭は世界的にみれば需要は増える見込み。また、開発したものを日本ではなくアジアや他の地域に供給するという選択肢があっても良いのではないか。日本に持ってこない資源を開発することに格別の意見もあるかもしれないが、資源市場はグローバル化している。日本だけではなくアジア全体、あるいはもう少し大きな市場を意識して開発を進めることが結果的に日本の国益に資する場合もあるという発想も重要だと思う」(相楽 孝一)

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